共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

チョウ類における帯糸黒色化調節機構の解析
新規・継続の別 継続(平成22年度から)
研究代表者/所属 山口大院医学系
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 山中明

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

落合正則 北大低温研

研究目的 ジャコウアゲハやナミアゲハなどのチョウ目昆虫は、蛹になる前の段階で、自身の体を支える帯糸を吐糸する。この帯糸は周囲の環境(湿度)の違いによって白色あるいは黒色となる。昨年度の研究で、環境適応調節によって誘導されるチョウの帯糸黒色化調節機構にフェノール酸化酵素が機能していることが示唆された。本研究では、より詳細なチョウ類の帯糸黒色化機構を解明することを目的としている。
  
研究内容・成果 昨年度の研究の再現性を確認するため、ジャコウアゲハの絹糸腺のトータルRNAからcDNAを合成し、カイコガ幼虫血球細胞のcDNAを対照として、カイコガ血球細胞proPO1遺伝子のプライマーを用いてPCRを行った。その結果、PCR産物のバンドは血球細胞および絹糸腺で同じ位置に認められ、ジャコウアゲハ絹糸腺でproPO mRNAからproPOが合成されていることが示唆され、再現性が確かめられた。現在、ジャコウアゲハ絹糸腺のフェノール酸化酵素遺伝子のクローニングを実施中である。
他種チョウ目昆虫の帯糸の黒色化現象を調査したところ、アゲハチョウ科のナミアゲハ、キアゲハ、カラスアゲハ、ナガサキアゲハで黒色化が観察された。また、タテハチョウ科のヒメアカタテハ、サカハチチョウの台座糸は黒色化というよりは茶褐色化することが観察された。アゲハチョウ科においては、ジャコウアゲハ同様、高湿度条件下で黒色化が起こることが判明した。このことから、アゲハチョウ科・タテハチョウ科のチョウ類の多くは、絹糸腺から吐糸される糸の中に、フェノール酸化酵素あるいは別の酸化酵素等を含有させ、糸の強度を強くしているのではないかということが示唆された。
  
成果となる論文・学会発表等 山中 明・林友萌子・林 絵里・北沢千里・落合正則. ジャコウアゲハの帯糸の黒色化機構の解析. 日本農芸化学会中四国支部大会(第34回講演会)(山口大学工学部), 2012.9.21-22.日本農芸化学会中四国支部大会講演要旨集, p.43, 2012.