共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

オホーツク海域環境情報収集システムの開発
新規・継続の別 継続(平成14年度から)
研究代表者/所属 都立産技高専ものづくり工学科
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 若林良二

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

長澤正氏 沼津工業高等専門学校・電子制御工学科 教授

2

椋本介士 静岡大学工学部 技術専門職員

3

亀井利久 防衛大学校・電気情報学群・通信工学科 准教授

4

三寺史夫 北大低温研 教授

5

高塚徹 北大低温研 技術専門職員

研究目的  北海道大学低温科学研究所環オホーツク観測研究センターでは,これまで北サハリンに観測所の設置,海洋ブイを流す等によりオホーツク海域の環境観測を行ってきた.観測データの収集は主にデータロガーに記録されたデータを現地にて回収してきた.本共同研究では,オホーツク海域で収集された各種気象観測データを流星バースト通信(MBC: Meteor Burst Communications)を用いて無人、無電源でも長期にわたり安定的かつ効率的に運用できる収集するシステムを構築し,その可能性とその性能を探ることである. 今年度はMBCシステムの伝送データ欠損率を改善するため,送受信局のアンテナ仰角によるデータ伝送能率への影響を検討する.
  
研究内容・成果  サロマ湖(キムアネップ岬)での気象データ(温度,湿度,風向,風速,日照度など)をMBCシステムを用いて札幌(低温研)まで継続的に伝送する実験を行なっている.サロマ湖・札幌間(約200 km)でのMBCシステムの5素子八木アンテナはこれまで水平に対向するように配置させて実験を行なっていたが,昨年度までの蓄積データから,これまで他の地域で行なっていたMBC実験に比べて伝送データの欠損率が大きいことが分かった.通常のMBCを用いた見通し外通信では伝搬距離が600 km以上となるため,アンテナの最大放射方向が水平方向となるように設置しているが,本システムでは通信距離が200 kmと比較的短いため,上空約 100 kmに発生する流星バーストに有効に電波が放射されていないことが考えられ,アンテナ最大放射方向をこれまでの水平から45度上方に仰角を持たせるように設置変更して伝送実験を行った.これにより降雪期を除いて伝送効率が大幅に改善されることが明らかとなり,さらに,大地面のアンテナの放射パターンの数値解析を行い,仰角が65度付近で流星バーストに有効に放射されることが分かった.残念ながら,年度内にアンテナの仰角を65度に変更する工事を行うことができなかったが,今後はアンテナ仰角を最適に設置し,引き続き伝送実験を行いたい.仰角による伝送能率の改善が見られなかった降雪期に関しては,大地面に積雪がある場合の影響を考慮した解析を行い,12月末〜3月末までの伝送能率の改善を図りたい.現時点では,流星バーストの発生高度を約100 km,通信に関与する流星はサロマ湖・札幌間の中点上空付近と想定している.現在,電波の到来方向を推定するシステムを構築中であり,到来方向を推定するためのデータ取得が可能となったため,今後は,このシステムを用いて通信に関与する流星の発生領域を推定し,さらに有効なアンテナの設置方法を検討する予定である.
 また,MBCシステムの伝送性能の改善を図るために札幌(低温研)・静岡(静岡大ならびに沼津高専)間で284ビットの畳込み符号化パケットをBPSK(2400, 4800 baud)およびQPSK(2400 baud)で変調して伝送する実験を行い,符号化の効果,変復調方法の比較・検討を行った.その結果,畳込み符号化によりパケット伝送成功確率が向上することが確認された.変復調方式については,SNRの低さや位相推定誤りによりQPSK変調方式よりもBPSK変調方式を用いた方がビット誤り率が低くなること,判定帰還型キャリア同期法を用いることにより,遅延検波方式よりも大幅に高いパケット復調成功率が得られることなどが明らかとなった.
  
成果となる論文・学会発表等 平阪健太,篠原正俊,若林良二,亀井利久,長澤正氏,椋本介士,三寺史夫:“雑音の多い都市部でのトーン伝送実験 -変動基準値を用いた信号判定-”,信学ソ大,B-1-7,2012年9月.

金子裕哉,若林良二,亀井利久,椋本介士,三寺史夫,長澤正氏:“受信強度の指数減衰を考慮した流星バースト通信路モデルの検討”,信学総大,B-1-33,2013年3月.

亀井利久,若林良二,長澤正氏,椋本介士,高塚徹,藤田和之,三寺史夫:“流星バースト通信を用いたオホーツク海域環境情報収集システム開発に関する検討”,信学総大,B-1-34,2013年3月.