共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷域森林生態系における環境変動に伴う炭素循環変動の解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 広島大学大学院生物圏科学研究科
研究代表者/職名 講師
研究代表者/氏名 戸田求

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

原登志彦 北大低温研 教授

研究目的 将来の環境変動に伴い、寒冷域の森林がその生理生態的機能や構造を通して大気ー森林間の炭素循環にどのような影響を及ぼすのか、この影響評価研究は陸域生態系と環境との相互作用の解明に向けた多くの研究の中で重要な位置を占めている。申請者は、低温科学研究所生物環境部門寒冷域植物生理生態講座の原登志彦教授とともに、同課題の解決に向けた共同研究を進めてきた。本申請で、申請者は、原教授が北海道の森林で継続している森林動態に関する野外観測と申請者が行う数値モデルの双方を用いて、将来の環境変動に伴う北海道の森林の森林動態予測に向けた研究を行うことを目的とした。
  
研究内容・成果 筆者は,原教授の研究室で北海道大学北方生物圏フィールド科学センター内雨龍研究林を対象に1998年より継続されてきた毎木調査を用いて、森林のサイズ構造動態を定量化するための解析研究、および数値モデルによる研究をおこなった。対象林分は,土壌の掻きお越しをした後に一斉に生長を始めたダケカンバ林分とした。同林分は2011年現在,40年を超える林齢となり,樹木個体間の競争が熾烈で年々の個体密度の減少が顕著にみられた。同林分を対象として行われた数値モデル実験より,個体間の競争関係を良好に再現した (Toda et al., 2011a)。同時に,同林分にもうけられた観測タワーによって計測された生態系生産量の値は数値モデルで得られた値とよく一致した。このことから,本研究で得られた数値モデルは,北海道における同一種同齢林(ダケカンバ林)の植生動態および生態系の炭素動態の年々変化を記述することができ,将来の北方林生態系の炭素動態変動を予測していく上で有効なツールになりうることが示された。また,2004年に北海道を襲った大型台風の生態系の炭素動態変動への影響は大きく,これらの定量的なモデル予測を行うには自然撹乱のアルゴリズムを挿入する必要のあることが示唆された(Toda et al., 2011b)。これらの結果と課題を取りまとめた(戸田, 2013)。

  
成果となる論文・学会発表等 ・Toda, M., Hara, T. et al. Simulating seasonal and inter-annual variations in energy and carbon exchanges and forest dynamics using a process0based atomosphere-vegetation dynamics model, Ecological Research, 26, 105-121, 2011.

・Toda, M., Hara, T. et al. Photosynthetic recovery of foliage after wind disturbance activates ecosystem CO2 uptake in cool-temperate forest of northern Japan, Journal of Geophysical Research, doi:10/1029/2010JG001611, 2011.

・戸田求,地域スケールにおける大気と森林生態系との相互作用研究,「地球環境変動の生態学」,書籍分担執筆,2013 (印刷中)