共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

氷塊衝突によるCFRP材料の損傷挙動の解明と氷塊代替え物質の探索
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 名古屋大学大学院工学研究科
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 田邊靖博

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

武田雄太 名大工学研究科 化学・生物工学専攻 修士課程2年

2

平田修司 名大工学研究科 化学・生物工学専攻 修士課程2年

3

冨永明里 名大工学研究科 化学・生物工学専攻 修士課程1年

4

森康平 名大工学研究科 化学・生物工学専攻 修士課程1年

5

渡部直樹 北大低温研

研究目的 CFRP(炭素繊維強化樹脂複合材料)は高い比弾性や比強度を生かし、軽量化によって燃費を大きく改善できることから、航空機の一次構造材として利用されている。氷塊の衝突が航空機の安全性に与える影響の解明は急務であるが、装置の制約から国内では全く行われていない。
そこで、本申請共同研究では、氷塊がCFRPの飛翔体衝突現象に与える影響を解明することを目的として、申請者がこれまで蓄積してきた他材質と氷塊とがCFRPの損傷に与える相違点・類似点を実験的に検証し、氷塊がCFRPの損傷に与える知見を得るとともに、制約の多い氷塊衝突実験を模擬可能な代替え物質ならびに衝突実験の制御パラメータを探索することを目的とする。
氷塊飛翔体の飛散状態 氷塊ならびにウレタンゴム飛翔体衝突によるCFRPの損傷痕 
研究内容・成果 氷塊寸法(φ15mm×10mm、15mm、20mm)・衝突速度(100m/s〜420m/s)を制御した氷塊衝突実験から、氷塊がCFRPに損傷を与える因子は、運動エネルギーだけではなく、飛翔体の衝突速度も重要であると推察される。短く(軽く)て速度が速い氷塊飛翔体は、CFRPに大きな損傷を与える。これは、氷塊の破壊と飛散過程が大きく影響しているためと考えている。
 シリコンゴムならびにウレタンゴムを飛翔体とした衝突実験を行い、氷塊衝突がCFRPの損傷に与える影響との類似点ならびに相違点を検討した。その結果、シリコンゴムは氷塊と比較して同一速度あるいは同一運動エネルギーではCFRPに与える損傷が遙かに小さい。しかし、ウレタンゴムでは氷塊と類似の損傷(発生亀裂の形態・形状)を与えるが、大きな損傷を与えていることが観察された。氷塊衝突を模擬するには、シリコンゴムとウレタンゴムとの中間的な素材を用いた衝突実験を行う必要がある。
 CFRPあるいは飛翔体の衝突時(瞬間)の挙動を詳細に観察する目的で、高速度ビデオカメラを導入して、衝突の様子を撮影した。その結果、氷塊は衝突と同時に内部に粉砕亀裂が発生し、CFRP試料を貫通する場合と非貫通の場合とで粉砕粉の飛散の様子が大きくことなることが分かった。この飛散状態の違いが、短い氷塊ほどCFRPに大きな損傷を与える要因になっていることが推察された。ウレタンゴム飛翔体の場合は、大きな弾性変形を生じることなく、跳ね返る様子が観察された。跳ね返る速度から運動エネルギーを計算し、試料の衝突で散逸したエネルギーを推定した。この計算結果と氷塊の損傷痕寸法とを照らしあわせることで、氷塊の粉砕に費やされエネルギーおよび粉砕粉の飛散によって消費された運動エネルギーとの総和を算出した。氷塊寸法が長くなるほど、これら総和が大きくなる傾向が確かめられた。このことが、最初に記載した「短く(軽く)て速度が速い氷塊飛翔体は、CFRPの大きな損傷を与える」主因であると考察される。
 本年度の共同研究を通して、次のことが明らかとなった。
 長い飛翔体は衝突時の自身の変形・破壊・飛散で散逸されるエネルギーが大きくなり、同じ運動エネルギーがならば短い氷塊ほどCFRPに大きな損傷を与える。
 氷柱のCFRPへの衝突時の粉砕・飛散の様子を写真撮影することができた。
 損傷痕の寸法に程度の差はあるが、亀裂の様子は氷塊とウレタンゴムで非常に似ている。また、シリコンゴムを飛翔体として用いた場合には、その損傷痕は氷塊を用いた場合のそれよりもはるかに小さい。これらのことから、氷塊のCFRPへの衝突を模擬するには、ウレタンゴムよりも変形しやすいゴムを飛翔体として用いることが必要である。
氷塊飛翔体の飛散状態 氷塊ならびにウレタンゴム飛翔体衝突によるCFRPの損傷痕 
成果となる論文・学会発表等  田邊靖博、佐宗章弘:「高速異物の衝突に伴うCFRPの変形・損傷挙動の可視化ならびに定量化」、複合材シンポジウム13(テクノ・シンポジウム名大);平成25年2月15日(金)、名古屋大学野依記念学術交流館