共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

南北両極域における海洋・海氷の現場観測研究
新規・継続の別 継続(平成23年度から)
研究代表者/所属 海洋研究開発機構 地球環境変動領域
研究代表者/職名 技術研究主任
研究代表者/氏名 伊東素代

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

北出裕二郎 東京海洋大海洋科学部 准教授

2

平野大輔 水産総合研究センター 研究支援職員

3

菊地隆 海洋研究開発機構地球環境変動領域 チームリーダー

4

川口悠介 海洋研究開発機構地球環境変動領域 ポスドク研究員

5

渡邊修一 海洋研究開発機構むつ研究所 所長

6

佐々木健一 海洋研究開発機構むつ研究所 研究員

7

牛尾収輝 国立極地研究所 准教授

8

田村岳史 国立極地研究所 助教

9

深町康 北大低温研

10

大島慶一郎 北大低温研

11

青木茂 北大低温研

研究目的 南北両極域は、地球温暖化の影響が最も大きいと予測されており、既に北極海や南極海の一部では、顕著な海氷減少が見られている。本研究課題には、南極海および北極海の観測を主導する4つの研究機関が参画しており、本研究課題の枠組みを利用して、共同観測により取得したデータの解析や今後の共同観測研究の議論を進めることを目的とする。
  
研究内容・成果 平成24年度には、本研究課題に参画する研究機関間で、以下の現場観測の共同研究を実施した。
1.日本南極地域観測隊によるケープダンレー沖における係留観測(極地研・低温研)
2.日豪共同による南極海の海氷域における海氷物理・生態研究に関する冬季航海観測(極地研・低温研)
3.「みらい」による南極海観測航海(JAMSTEC・低温研)
4.「みらい」、日加、日米共同による北極海太平洋側海域の船舶および係留観測(JAMSTEC・低温研)

また、これまでの共同研究で実施した現場観測データの解析結果の議論を行うため、2回の共同研究の打ち合わせを実施した。

まず、8月17日にJAMSTECむつ研究所の佐々木氏が低温研に出向いて、クロロフルオロカーボン類(CFCs)の観測データを用いたオーストラリア-南極海盆の深層水形成量の見積について、低温研の大島、青木、嶋田氏と議論・意見交換を行った。前回の議論に基づいて改良したボックスモデルでの計算結果について、高密度水形成量は数Svと見積もられ、改良前後で大きな差はないことなどを佐々木氏が報告し、それを踏まえてさらなるボックスモデルの改良、或いは今後の解析方針等についての打ち合わせを行った。モデルの改良点として主に検討すべきとされたのは、対象とする海盆の容積の再見積もり、ボックスを切る密度面についての妥当性、周極深層水でCFCsフリーとしている境界条件をより実際の観測値に近付けるための近似について、などであった。また、モデルの計算結果から、海盆内高密度水の鉛直拡散に関する定量的な見積もりが可能ではないか、データへのフィッティングの際の残渣をグラフにしてはどうかなど、今後の方針についての議論があった。

次に、12月5日にJAMSTECの川口氏が低温研に出向いて、2011年4月に実施した北極海の国際観測プロジェクト(North Pole Environmental Observatory)の結果を紹介した。このプロジェクトは、JAMSTECが提供する海氷設置型小型プロファイラ(POPS)、アラスカ大学による高精度のGPSドリフター、フランスUPMC大学による海氷厚センサー(Ice-T)を、北極点付近の多年氷域に相互に近距離で配置することにより、海氷融解が海氷の変形運動などに依存してどのように進行するのか、その素過程を調べる総合的な観測プロジェクトである。この観測では、気象擾乱の影響を受けて海氷がリードを形成する際、海氷下の混合層内が急激に昇温する事例を捉えた。この水温上昇はIce-Tによる海氷融解シグナルとも一致しており、結氷期から融解期に遷移する過程を捉えたものと考えられる。発表の後半では、海洋混合層モデルを用いた数値実験により、観測時に海氷下部でいかに熱交換がなされていたか、混合層内で熱がどのように再分配されていたかを議論した。
  
成果となる論文・学会発表等 Ohshima, K. I., Y. Fukamachi, G. D. Williams, S. Nihashi, F. Roquet, Y. Kitade, T. Tamura, D. Hirano, L. Herraiz-Borreguero, I. Field, M. Hindell, S. Aoki and M. Wakatsuchi, 2013: Antarctic Bottom Water production by intense sea-ice formation in the Cape Darnley Polynya, Nature Geoscience, 6, doi:10.1038/NGEO1738, 235-240.
Tamura, T., G. D. Williams, A. D. Fraser and K. I. Ohshima, 2012; Potential regime shift in decreased sea ice production after the Mertz Glacier calving, Nature Communications, 3:826, doi:10.1038/ncomms1820.
Iwamoto, K., K. I. Ohshima, T. Tamura, and S. Nihashi, 2013, Estimation of thin ice thickness from AMSR-E data in the Chukchi Sea. International Journal of Remote Sensing, 34, 468-489.
佐々木建一,嶋田啓資,渡邉修一,青木茂,大島慶一郎、オーストラリア-南極海盆内の南極底層水形成量の見積もり、2013年度日本海洋学会春季大会,東京,2013年3月

上記に加えて平成24年度に、論文1件、学会発表10件の成果を公表した。