共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

植物由来の凍結制御活性の氷晶形成・生長等に対する効果の解析
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 農業生物資源研究所
研究代表者/職名 上級研究員
研究代表者/氏名 石川雅也

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

山崎秀幸 農業生物資源研究所 研究助手(PD)

2

村川裕基 東京理科大 修士課程大学院生

3

古川義純 北大低温研

4

佐崎 元 北大低温研

研究目的  申請者らの研究により、多様な高耐寒性の植物組織は、厳しい氷河時代を生き抜く進化の過程で水の凍結という過激なストレスも制御できる活性を獲得し、凍結制御活性物質の宝庫であることが判ってきた。本課題では、このような凍結制御活性を取り上げ、氷晶形成・生長等に対する効果を氷晶生長専門家の下に解析し、これらの活性機構や組織の耐寒性機構での役割等を明らかにする。24年度は主に、氷核活性の高いブルーベリー枝の凍結開始過程を観察する一方、組織切片の最初の氷結晶発生やその生長を観察、解析することを試みた。
  
研究内容・成果 当該年度中には、申請者が忙しく、低温研への出張を行うことができなかった(旅費未使用)。しかし、前年度に古川先生、佐崎先生のご協力の下、低温研において行っていただいた実験(氷生長を観察するための顕微鏡装置を用いた、ブルーベリー枝の小片上での氷結晶発生の観察)を基に、氷晶発生を観察できる装置をいくつか当研究室で作成し、枝組織切片における氷晶発生の動画撮影、解析を試みた。また、当研究室で開発したデジタル赤外線サーモビュアを用いた凍結過程の非破壊可視化手法を用いて、20cm程度の枝の凍結開始部位や伝搬過程を観察した。
Intactの枝および環状除皮を行った枝等の凍結過程の可視化解析の結果から、ブルーベリー枝の凍結過程は、3段階からなることがわかった。凍結開始は、枝の皮層部の数箇所で生じ、これが緩やかに皮層部で左右に伝搬する。次に凍結が木部に伝搬して、急速な木部水分の凍結が左右に広がる。その後、未凍結の枝の皮層部分が更に時間をかけてじわじわと凍結していくことがわかった。このサーモビュアでの観察には、画像強度に応じた適切な画像取得間隔の選択や適切な画像演算が重要であった。
次に枝の皮層部のどの部位に凍結開始部位があるかを明らかにするため、枝の薄切り組織切片を作成し、作成した装置を用いて凍結過程を観察した。実体顕微鏡下で低温水槽に内に設置した試料室(水と試料が入っている)を観察する装置では、振動が大きく、きれいな画像を取ることができなかった。2種類のコールドチャンバーを正立顕微鏡或いは実体顕微鏡下に設置した装置では、市販のビデオカメラでも凍結過程を記録、解析することができた。この手法により、組織片における-2℃付近での凍結開始の瞬間を捉えることに成功した。また、凍結開始部位の頻度の高い組織領域を大まかに特定することができた。この部位の特徴を更に明らかにするために、電子顕微鏡による解析を現在進めている。また、試験管法による氷核活性測定をもちいて、皮層組織内部の各領域の氷核活性を詳細に測定することも進めている。顕微鏡観察で同定した凍結開始部位は、高い氷核活性を有することがわかった。
  
成果となる論文・学会発表等 本研究成果については、未発表である。