共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷圏の水文気象変動観測と陸面モデル検証の改良
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 海洋研究開発機構
研究代表者/職名 主任研究員
研究代表者/氏名 飯島慈裕

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

朴昊澤 海洋研究開発機構 研究員

2

中路達郎 北大・北方センター 助教

3

下山宏 北大低温研 助教

研究目的 寒冷圏での水文気象変動について、新型の観測システムでの通年観測を行い、有効性を共同で検証する。土壌の物理性と地上気象を合わせて測定し、これらを入力値・パラメータとした陸面モデルの適用によって地上〜土壌部間の熱・水循環過程の検証とその高度化の知見を得る。本研究で、鉛直分布測定用に開発された土壌水分計に地温測定を合わせたシステムを導入し、その有効性を明らかにするとともに、この観測データを用いた陸面モデルの地温・土壌水分変動の検証手法を確立することで、今後の寒冷圏陸域の観測研究の改良のための知見を蓄積する。
  
研究内容・成果 寒冷圏では、土壌の凍結融解と土壌水分の動態が地表面上の植生、大気との熱・水循環において重要な役割を果たす。海洋研究開発機構では、ロシア、モンゴル、アラスカなどの北半球寒冷圏の観測サイトで、凍土-植生-水文の諸過程を統合的に観測している。しかし、これらの物理過程の理解をより進めるためには、寒冷圏陸域の観測・解析研究をしている低温研との共同研究によって、国内の観測地で新規の測定システムの有効性を確かめる改良を進め、システムの改善を図るとともに、観測データを用いた陸面モデルの検証・改良を進める手法を実証していくのが効果的である。そこで本研究では、気象・地温・土壌水分の変動に関する観測を、北海道大学苫小牧研究林(クレーンサイト:研究林利用を申請済)において実施した。
平成24年度の研究成果は、2012年8月に北海道大学・苫小牧研究林のクレーンサイトの林床に、新型の地温(サーミスタ)と土壌水分(EnvironSMART)の鉛直プロファイル測定装置を設置し、通年での観測を開始し、合わせて陸面モデルの数値実験を進めた。土壌水分はTDR型のセンサーも同一箇所に設置し、比較検討を行う体制とした。現在までに、12月と1月の2回のデータ取得を行い、冬季間における地温・土壌水分変動の様子の解析を進めた。これらの気象・地温・土壌水分の観測データは、今後解析を共同で実施し、本観測手法の有効性を確かめると同時に、観測データと研究林内の熱・水フラックス測定データと連携させて、1次元水循環過程を評価する予定である。陸面モデルについては、CHANGEモデルによる凍結過程を含む地温・土壌水分変動の数値実験を開始し、シベリア・ヤクーツクの観測データに基づいて検証を開始した。こちらも、今後は苫小牧研究林での観測データを利用した検証と比較する予定である。
  
成果となる論文・学会発表等 Iijima, Y., A. N. Fedorov, T. Ohta, A. Kotani, T. C. Maximov, Recent hydrological and ecological changes in relation to permafrost degradation under increased precipitation in eastern Siberian boreal forest. Proceedings of The tenth International Conference on Permafrost, 1, 161–166. 2013
Park, H., J. Walsh, A. N. Fedorov, A. B. Sherstiukov, Y. Iijima, Tetsuo Ohata, The influence of climate and hydrological variables on opposite anomaly in active layer thickness between Eurasian and North American watersheds. The Cryosphere, 6, 2537 –2574. 2013.
Iijima, Y., T. Ohta, A. Kotani, A. N. Fedorov, Y. Kodama, T. C. Maximov. Sap flow changes in relation to permafrost degradation under increasing precipitation in an eastern Siberian larch forest. Ecohydrology, in press. 2013.