共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

オホーツク沿岸海域の低次生物生産に及ぼす環境要因の起源の解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 東京農業大学生物産業学部
研究代表者/職名 講師
研究代表者/氏名 朝隈康司

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

塩本明弘 東京農業大学 教授

2

西岡純 北大低温研

3

的場澄人 北大低温研

研究目的 オホーツク北海道沿岸海域は、宗谷暖流、表層低塩分水や海氷生成を要因とする中冷水など複数の水塊が混流する複雑な環境を有する。とくに宗谷暖流は黒潮を起源とする貧栄養水塊であるにも関わらずこの暖流が流れるオホーツク海北海道沿岸域は漁業資源が豊富であることが知られており、この資源量に見合う低次生産のメカニズムは未解明である。このため本研究は、貧栄養である宗谷暖流に対する栄養塩供給のメカニズムを解明するために衛星リモートセンシングを用いて宗谷暖流へ影響する環境要因をモニタリングするシステムを開発することを目的とする。
河川水の影響を受けた水(CDOM or SS)の検出結果の例  
研究内容・成果 北海道オホーツク海沿岸域を流れている宗谷暖流水は、オホーツク海の生物生産とくに低次生産への影響が考えられる。宗谷暖流水の特徴として黒潮を起源とする暖流系の水を引き継いでいるにも関わらず、大きさが10 μm以上の大型の植物プランクトンの占める割合が高いことが確認されつつある。とくに、宗谷暖流の勢力ともいえる流速が拡大する春先には大型プランクトンによるブルームが確認され、6月に一度 2 μm以下の小型プランクトンが優占するが、7月から9月にかけては大型が再度優占し、宗谷暖流の勢力が弱まり東樺太海流が流入し塩分が低くなる10月中旬以降は、10 μm以下の中型と小型のプランクトンが優占する傾向がある。このことから貧栄養である宗谷暖流と大型プランクトンの優占には関連性が見られ、大型プランクトンが優占と生り得る必要最低限の栄養塩供給が無ければこの現象は発生し得ない。このため、宗谷暖流への栄養塩供給のメカニズムを解明することがオホーツクの水産資源の持続的発展のために重要である。これまでに、人工衛星を用いたリモートセンシングを用いて宗谷暖流とクロロフィルa濃度の関連性を示す研究が様々な機関でなされてきた。夏季のサハリン南西部からみられる海表面温度の低い帯状の冷水帯と海表面クロロフィルa濃度の高い帯状域の一致が見られることは有名である。また人工衛星を用いたオホーツク海北海道沿岸域のクロロフィルa濃度の季節変化を観察すると春先および夏には北から沿岸にかけてクロロフィルa濃度が高い水塊、低い水塊、高い水塊の三層構造がみてとれる。これは春先においては氷縁ブルーム、宗谷暖流、沿岸、夏季においては冷水帯、宗谷暖流、沿岸の構造と考えられる。このことから、本研究では宗谷暖流への栄養塩供給は沿岸水の影響も無視できないとして沿岸水の影響を受けた水の衛星リモートセンシングによるモニタリングの開発を検討した。利用したデータはMODISの500 m解像度(チャンネル 1から7)を利用し、可視のRGB合成から河口付近の有色水塊の画素をサンプリングした。サンプリングされた画素はそれぞれのチャンネルでヒストグラムを作成し、最尤推定により有色溶存有機物と懸濁物に分類した。この分類された画素を沿岸水の影響を受けた水としてカウントすることにより、その面積を算出した。この結果、沿岸水の影響を受けた面積には明確な季節変化が見られた。春先は降水量と面積には相関が見られなく融雪の影響と考えられる。一方夏以降、降水後と面積が増加することを確認した。今後、影響範囲がどこまで及ぶのか流跡を解析をするとともにクロロフィルa濃度との関係を定量的に評価する予定である。
河川水の影響を受けた水(CDOM or SS)の検出結果の例  
成果となる論文・学会発表等