共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

数値モデルとドップラーレーダーデータを用いた雪雲の解析
新規・継続の別 継続(平成22年度から)
研究代表者/所属 気象庁気象研究所
研究代表者/職名 室長
研究代表者/氏名 山田芳則

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

小西啓之 大阪教育大学 准教授

2

吉本直弘 大阪教育大学 准教授

3

中井専人 雪氷防災研究センター 総括主任研究員

4

藤吉康志 北大低温研

研究目的 冬期に出現する雪雲の構造に関しては現在でも解明されていないことが多い。本研究では、
1)北海道に出現するさまざまな雪雲の構造の総合的な解析
2)ドップラーレーダーデータから精度の良い3次元気流構造を求める解析システムの高度化
3)ドップラー速度情報を併用した海氷移動ベクトルの効率的な作成方法の開発
を目的とする。
  
研究内容・成果 1. オホーツク海上の海氷の移動速度を精度よく探知することは、船舶の安全運航等にとって重要な課題である。海氷の移動速度場の算出には、これまで主に面相関法が用いられてきている。面相関法は30分程度の比較的長い時間間隔の画像データから推定するため、この間の微細な移動速度は探知するのは困難である。一方、海氷のドップラー速度データは、数分ごとに空間的に高分解能で取得できる。したがって、面相関法とドップラーレーダーデータを組み合わせることによって、より精度よく算出できる可能性があり、今回はその方法の開発を試みた。使用したドップラーレーダー速度データは、紋別市・大山山頂に設置されている低温研のレーダーで観測されたものである。今回は1台のドップラーレーダーからのデータ利用の試みである。複数のドップラーレーダーからのデータが利用できれば、multi-Doppler 解析によって海氷の移動速度が容易に高精度で算出できる。
 解析に用いた海氷の移動速度場は、30分ごとの海氷の画像から水平方向に 250 m 間隔で算出したものである。この時間内に、動径方向に100 m 間隔、方位角方向に1°と高分解能で約6分ごとに得られる海氷のドップラー速度データを組み合わせた。
 面相関法とドップラー速度データとの組み合わせの原理は変分法に基づいている。具体的には、(1) data fit と (2) 組み合わせた結果の移動速度と面相関法で算出された移動速度との近接度、及び (3)平滑化項から構成される汎関数が最小になるように移動速度場を決定する。(1) と (2) のそれぞれには、適当な重みを付けている。data fit の項は、組み合わせた結果の移動速度が観測されたドップラー速度と最小二乗法的に適合するようにするためのものである。ドップラー速度データを東西・南北方向の直交座標系に内挿する処理では、ビームごとの内挿を行うことによって、レーダー近傍の格子点でも精度が低下することを回避している。また、海氷域全体は、小さいながらも無視できない大きさの移動速度で移動していたため、この移動速度を考慮して内挿処理を行った。平滑化項の特性を決める重みの計算では、3-dB の cutoff 波長として、水平分解能の4倍の値を用いた。組み合わせた結果の移動速度場と面相関法での結果とを比較すると、海氷域の縁の部分で比較的大きな差が見られた。今回の結果は、面相関法とドップラー速度データとの適切な組み合わせで、面相関法で算出した移動速度の場が適切に補正されてより精度のよい速度場が算出できる可能性を示唆している。

2.地形性の「だし風」の解析に向けた準備

紋別と雄武に設置されている低温研ドップラーレーダーデータを用いた multi-Doppler radar 解析による、地形性だし風の解析準備を進めた。
  
成果となる論文・学会発表等 Fujiyoshi, Y., K. Oosumi, and Y. Yamada: Retrieval of high temporal and spatial distribution of sea ice velocity fields using Doppler radar data. The 27th International symposium on Okhotsk Sea & sea ice. 講演番号:A-11, 要旨掲載ページ:43-46, 2012年2月20日