共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
氷塊衝突によるCFRP材料の損傷挙動の解明 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 名古屋大学 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 田邊靖博 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
渡部 直樹 | 北海道大学低温科学研究所 | 教授 |
2 |
武田 雄太 | 名古屋大学工学研究科 | 修士1年 |
3 |
平田 修司 | 名古屋大学工学研究科 | 修士1年 |
研究目的 | CFRPは高い比弾性や比強度を生かし、軽量化によって燃費を大きく改善できることから、航空機の一次構造材として利用されている。さらにはターボファンエンジンのファンブレードへの利用も検討されている。これら用途では、CFRPは種々の異物飛翔体との衝突が避けられない。飛翔体の材質によってCFRPの損傷が大きく異なると考えられる。特に、氷塊の衝突が航空機の安全性に与える影響の解明は急務であるが、装置の制約から国内では全くといえるほど行われていない。 そこで、飛翔体材質がCFRPの飛翔体衝突現象に与える影響を解明することを目的として、氷塊がCFRPの損傷に与える横断的な知見を得るための実験を行う。 |
研究内容・成果 | 試験片として、強度の異なる繊維あるいはマトリックス樹脂の異なる4種類のCFRPを用いた。試験片を160 mm×160 mmの窓を有する治具に固定して惑星科学衝突実験室に設置されているガス加速装置を用いて、φ15 mm×10 mmの氷塊飛翔体を衝突させた。衝突速度は、約140 m/s、250 m/s、300 m/s、400 m/sであった。 試料Aは、408m/sで氷塊は試料を貫通した。また、試料Bも氷塊が試料を貫通した。しかし、試料C、試料Dは、同様の速度において氷塊が貫通することはなかった。試料Aと強化繊維が同じで異なるマトリックス樹脂を用いている試料Cは衝突速度402m/sで氷塊が貫通しなかったことから、マトリックス樹脂の相違も貫通限界速度に関係していることが示唆される。 Fig.1の試料Bの写真を観察すると、Fig.2の試料Aと比べて損傷の仕方が大きく異なり、貫通痕がはっきりと認められる。これは高弾性・低破断歪みによる打ち抜き破壊によるものと推察される。高強度、低弾性率、大きな破断歪みを有する繊維を用いた試料Aでは繊維破断までの飛翔体エネルギー吸収が大きく,粉砕された氷塊による押し込み力によって,繊維束の隙間を押し退けていくように粉砕された氷塊が抜けていったと推察している。 さらに、氷塊を模擬するための材質の検討を行った。試料Aにφ15mm×10mm厚ナイロン66円柱を268m/sで衝突させたところ、飛翔体が試料を貫通した。氷塊を同程度の速度(253m/s)で衝突させた場合よりも大きな損傷となっている。貫通痕も明確であった。飛翔体を氷塊からナイロン66に代えたことで、飛翔体の粉砕(破壊)や大きな変形が起こらなかったことが主因と考えられる。そこで、強度のより低いPEを254m/sで衝突させた。結果をFig.3に示す。ナイロン66のように貫通するということはなかったが、同程度の速度で氷塊が衝突した損傷と比較すると、幾分ではあるが深く広範囲に亀裂が広がっている。以上から氷塊を模擬するには、もう少し強度が低い材質が適切であると判断される。今後、別材質の飛翔体を用いて同様の実験を行い検証を行う予定である。 |
成果となる論文・学会発表等 |