共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
生存環境に依存した昆虫の体色多形性発現の基礎機構の解明 |
新規・継続の別 | 継続(平成22年度から) |
研究代表者/所属 | 信州大学繊維学部 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 白井孝治 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
島田拓郎 | 信州大学大学院工学系研究科 | 修士1年 |
2 |
深本花菜 | 信州大学繊維学部 | アソシエイト研究員 |
3 |
落合正則 | 北大低温研 |
研究目的 | エビガラスズメ幼虫の基本体色は緑色である。この体色はAcINSとeCBPの2種類の色素結合タンパク質が真皮細胞に蓄積するためである。しかし、これらのタンパク質は共に分泌タンパク質であるため、通常は細胞内に留まることは出来ない。従って、AcINSとeCBPの真皮細胞内での蓄積には特別な機構が必須である。この特別な分泌経路は調節性分泌経路と呼ばれ、多細胞生物が個体としての統合機能を発揮するための根幹をなす機構であるが、その分子基盤は十分に解明されていない。本研究はエビガラスズメ幼虫の体色発現における調節性分泌機構の解明を目的に、新たに発見したタンパク質凝集成分Xの性質を明らかにした。 |
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研究内容・成果 | 凝集成分Xの性質について調査する目的で、幾つかの実験を行った。まず、成分X量の増加量と形成された沈殿量は比例せず、成分Xの凝集活性はそれぞれの成分が一定の比の場合に最大となることが明らかになった。次にCa2+濃度を変化させた場合、沈殿量はCa2+濃度の増加に伴い増大した。すなわち、成分Xは多くのCa2+と結合することでタンパク質を凝集・沈殿させると考えられる。凝集の至適pHを調査した結果、弱アルカリ性で凝集活性が最大となった。この沈殿形成の至適pHが アルカリ側と言う点は、哺乳類で報告されている、同様の成分、クロモグラニンA (CgA)と大きく異なる。 また、成分XはCa2+以外の金属イオンでも、Pb2+、Al3+、Cu2+を用いても凝集沈殿が認められた。CgA に関してはこれまでCa2+以外で凝集実験の報告が見あたらないため比較は出来ないが、今後、成分Xの凝集メカニズムを考察する貴重な知見となることを期待したい。それぞれの実験において、沈殿形成量と共沈殿したAcINS量を比較したところ、形成された沈殿量と、それに巻き込まれ共沈殿したAcINS量がほぼ相関することを確認した。 最後に凝集にAcINSが優先して(選別されて)巻き込まれるのか、すなわち他の成分と比較して特異的なのかどうかを調べるため、ウシ血清アルブミン(BSA)存在下において凝集沈殿を形成させ、沈殿に巻き込まれたAcINS量の変化を調べた。その結果、添加したBSA量の増大に伴い、沈殿中のAcINS量は減少し、BSA量は増大した。しかし、AcINS量の減少は対BSAモル比の増大より緩やかなため、ある程度の親和性(特異性)が示唆される。本実験は成分Xの単離後、再度検討する必要がある。 以上、本研究では、凝集成分Xの凝集特性を調査した。その結果、凝集成分Xはアルカリ性溶液中でカルシウム、又は亜鉛、アルミニウム、銅の存在下で凝集沈殿を形成すること、凝集に伴うAcINSの巻き込みは必ずしも特異的でないことが明らかになった。さらに凝集にはそれぞれの成分間の最適比があることがわかった。 |
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成果となる論文・学会発表等 | 特になし |