共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

寒冷圏沿岸海域のアマモ群落における硝化菌の生態生理学に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 日本大学
研究代表者/職名 専任講師
研究代表者/氏名 中川達功

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

高橋令二 日本大学 准教授

2

福井学 北大低温研

研究目的 寒冷圏の沿岸海域のアマモ場におけるアンモニア酸化菌および亜硝酸酸化菌の低温環境における硝化作用への寄与度を調べることを目的とし、次の実験を行った。1) アマモ場の底泥を接種源としてアンモニア酸化菌と亜硝酸酸化菌の培養実験、2) アマモ場の底泥からDNAを抽出し、底泥中の硝化菌関連遺伝子の解析。
  
研究内容・成果  2011年7月26日に北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの厚岸臨海実験所を調査拠点とし、厚岸湖内のアマモ場の底泥を採取した。試料は素潜りによりアマモ場から約23 cmのコア試料として回収した。採取時の環境データは次の通りであった。水温18.6℃、pH8.3、水深1.3m。コアの状態は上部の数mmは酸化層で灰色であり、その下層は黒色の泥で硫化水素臭有りであった。上部の灰色層をコア試料から回収し、培養実験と遺伝子解析実験に供した。アンモニア酸化菌用液体培地に上部の灰色層の泥を接種し、10℃、20℃、30℃で培養を行った結果、全ての温度において亜硝酸の生成が認められた。培養後の菌体からDNAを抽出しアンモニア酸化バクテリア (AOB) とアンモニア酸化アーキア (AOA) のamoA遺伝子を標的としたPCRを行った結果、10℃と20℃ではAOB amoA遺伝子のみが検出され、30℃ではAOBとAOAの両amoA遺伝子が検出された。一方、亜硝酸酸化菌用液体培地に上部の灰色層の泥を接種し、10℃、20℃、30℃で培養を行った結果、30℃で顕著な亜硝酸減少が認められた。さらに、上部の灰色層の泥からDNAを直接抽出し、amoA遺伝子を標的としたPCR後にアガロースゲル電気泳動を行った結果、AOBのamoA遺伝子断片バンドの方がAOAのそれよりも蛍光強度が明らかに強かった。以上の結果より、厚岸湖内のアマモ場の底泥においてはAOBが10℃から30℃の温度範囲で硝化作用に大きく関与していることが推測された。
  
成果となる論文・学会発表等