共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
海産微細藻の光合成色素タンパク質の特性化 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 神戸大学 内海域環境教育研究センター |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 村上明男 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
|
所 属
|
職 名
|
|
1 |
秋本誠志 | 神戸大分子フォトサイエンス研究センター | 准教授 |
2 |
田中歩 | 北大低温研 | 教授 |
研究目的 | 海産の微細藻類の中には生息場所の光環境に適応するために特殊化した光合成色素をもつものが見られる。外洋域の有光層の中下層においては、ラン藻(ピコシアノバクテリア)SynechococcusやProchlorococcusが優占しており、これらの光合成色素の分光特性は水中の光環境に巧く適合していることが知られている。Prochlorococcusは、全光合成生物の中で唯一“ジビニル型クロロフィル”を持つ例外的な存在である。本研究では、Prochlorococcusの光合成反応システムを解明する一環として、色素タンパク質の分離法の開発、および分光特性などの解析を行うことを目的としている。 |
|
|
研究内容・成果 | まず、ラン藻Prochlorococcusの高蜜度培養した細胞を用いた生化学実験を進める上での課題を検討した。ジビニル-クロロフィルaとジビニル-クロロフィルbの相対含量が大きく異なるProchlorococcus3株全てについて、従来の培養法や培地成分について改良を加えながら、生化学実験等に藻体を安定供給できるようにした。Prochlorococcusの細胞サイズ(直径)は1μm以下と一般的なラン藻と比べても非常に小さいため、従来の細胞分画法や細胞破砕法はそのまま適用できないため、基本的な生化学実験(細胞の遠心回収、細胞の破砕、細胞成分の分画、膜タンパク質の可能化、電気泳動による分離など)の条件について見直しを行った。特に、生細胞のサイズが小さいことで困難となる、細胞破砕の確認手段と未破砕細胞と破砕膜断片の遠心分別などに、留意が必要であった。細胞収穫、細胞破砕、破砕後の細胞分画については、いくつかの課題は残ったものの、従来の方法に様々な工夫を加えることで大半の問題は解決できる見通しがたった。チラコイド膜の可溶化や膜タンパク質の分離では、主に設備面(遠心機、超遠心機)での改善の余地が残されている。 現在、未変成電気泳動法で分離した色素タンパク質複合体の複数のバンドについて、HPLCによる色素組成の分析、顕微分光装置による吸収蛍光スペクトル測定、時間分解蛍光分光法による色素間のエネルギー移動の解析、質量分析装置による含有ペプチドの同定などを進めている。今後は、これらの解析結果をもとに、外洋貧栄養海域での主要な一次生産者として注目されているProchlorococcusの光合成系の特異性や光、温度、栄養塩などの環境変動への適応能についても、解明を進める計画である。 |
|
|
成果となる論文・学会発表等 |