共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

天然水トリチウムの調査及び技術に関する研究
新規・継続の別 継続(平成21年度から)
研究代表者/所属 北大低温研
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 石井吉之

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

斎藤正明 東京都立産業技術研究センター 主任研究員

2

今泉洋 新潟大学自然科学系(工学部) 教授

3

加藤徳雄 愛媛県立医療技術大学保健科学部 講師

4

北岡豪一 岡山理科大学理学部 教授

研究目的  水循環の研究を進める上で天然水中のトリチウムは理想的なトレーサーであり、天然水の起源や年代、流速や流動方向に関する有用な情報を与える。しかし、入力となる降水トリチウム濃度は地域や季節によって異なり、各地域で継続して測定しなければならない。本研究の目的は、地域や季節によって異なる降水トリチウム濃度の変動を、ある一定トリチウム濃度の大陸起源水分と海洋起源水分とが季節的な降水となり、それらの入れ替わる期間が地域によって異なることによって降水トリチウム濃度が決まるという仮設をたて、国内の少なくとも1ヶ所で観測されるデータから各地の降水トリチウム濃度を推算しようと試みることである。
  
研究内容・成果  昨年度までの懸案事項について議論を深め、次のような方針が定まった。
1)疑似浸透水のサンプリング装置として今泉式ガラスフィルター(G-4)の利用を考える。コスト面の検討や、運用面での細かいマニュアル化が必要。
2)3ヶ年余の取得データについては、Radioisotopes誌に2本立て構成で論文投稿する
・降水,地下水,樹液及び空気中水分のトリチウム観測値の比較
・降水トリチウム観測記録を利用する地下水起源水濃度の推定
3)通年サンプル採水装置は当面は旧バージョンを用いる。新バージョンは取り止める。通年採水装置の改良案を練り直す。設置・チェック・採水が楽なものが良い。
 また、新潟における擬似浸透水のトリチウム濃度調査の結果、次の4)〜7)点が明らかにされた。
4)非海塩性気団中のカルシウム濃度は、その気団中のトリチウム濃度との間に良い相関が見られる。
5)全降水よりも、擬似浸透水の方が、よりよい気団動態追跡因子として活用できる。
6)短期降水中に含まれるトリチウム濃度と後方流跡線を用いて考察することで、気団動態やトリチウム濃度の変化の要因を推測できる可能性がある。
7)福島第一原発事故の影響は、トリチウム濃度を追跡因子とすることで、ある程度解明できる可能性が高い。 
  
成果となる論文・学会発表等 Yurong JIAO, Sayuri ISHIDA, Kayoko TAKADA, Hiroshi IMAIZUMI,Naoki KANO, Masaaki SAITO: Observation of the movement of the precipitation by using tritium tracer. Radioisotopes, 60(9), 363-374, 2011.
佐藤徹也, 焦玉栄, 今泉洋, 狩野直樹: トリチウムトレーサー法を用いた硫酸銅の結晶水の挙動. Radioisotopes, 60(5), 215-219, 2011.
片岡憲昭, 今泉洋, 狩野直樹: T-for-H交換反応を用いた室温におけるCOOH基とNH2基の2段階同時解析. 第48回アイソトープ放射線研究発表会要旨集, p.4, 2011年7月6日, 東京.
Jiao Yurong, 石田さゆり, 柳麻美, 今泉洋, 狩野直樹, 斎藤正明, 加藤徳雄, 石井吉之: Annual or seasonal variations of specific activity of tritium and of concentrations of major ions in precipitation in Niigata city. 第48回アイソトープ放射線研究発表会要旨集, p.5, 2011年7月6日, 東京.
石井吉之:温暖化が及ぼす極付近の氷の危機. 第48回アイソトープ放射線研究発表会要旨集, p.151, 2011年7月6日, 東京.