共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
航空機による微小重力実験の新規物理化学テーマの発掘と実験システムの開発 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 北大低温研 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 古川義純 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
吉崎泉 | JAXA宇宙科学研究所 | 主任研究員 |
2 |
塚本勝男 | 東北大院理 | 教授 |
3 |
木暮和美 | 日本宇宙フォーラム | 主任研究員 |
4 |
藤田修 | 北大院工 | 教授 |
5 |
佐崎元 | 北大低温研 |
研究目的 | 航空機のパラボリックフライトに20秒間の微小重力環境が発生する。この環境を用いて様々な実験を行うことが可能であり,将来の宇宙実験に結びつく可能性を秘めている。しかしながら,この環境を利用した実験テーマの提案は,日常的に体験する環境とはこともあり,大変難しい。本課題では,航空機実験や宇宙実験に携わる研究者を招き,航空機実験により実施できる物理化学実験のテーマを発掘するための方策を検討し,それをもとに北海道大学の1年目学生に対して開講している一般教育演習「無重力の科学」の講義で実践することを目的としている。 |
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研究内容・成果 | スペースシャトルや宇宙ステーションで人間が居住するようになり、無重力におけるさまざまな現象を見聞きする機会も増えている。さらに、無重力の環境を利用して、さまざまな科学実験が実施されてきた。重力の制限を解き放つことによって、これまで知られていなかった新しい現象までも発見されることもある。航空機のパラボリックフライトでは,1フライトに付き,20秒間の微小重力環境が10回前後実現する。航空機は有人でのフライトが可能であるため,宇宙飛行士のような特別な訓練なしに,研究者が微小重力を実際に体感し,実験環境として利用することが出来る唯一の方法である。 しかしながら,無重力とはどのようなものか、無重力はどのように作るのか、などの基礎的事項を学ぶことは簡単ではない。これは,微小重力環境は日常的に実現するものではなく,重力の束縛のない現象を想像することが簡単ではないということに起因する。 本課題では,航空機や国際宇宙ステーションなどを利用して,微小重力実験を実施している専門研究者を招き,最先端の微小重力実験について議論を深めるともに,微小重力環境を利用した科学研究のあり方について討議を行った。ここでの討論は,2012年に実施が予定されている国際宇宙ステーションにおける「Ice Crystal 2」と呼ばれる,過冷却水中での氷結晶成長実験の実施計画の議論を中心に行った。この実験では,過冷却水中に不凍糖タンパク質と呼ばれる特殊なタンパク質を添加する。このタンパク質は,氷結晶の成長を制御する機能を持つものとして,近年大きな注目を集めている。この実験で取得する結晶成長過程の画像処理をどのような手法で行えば最も効率的かを検証した。 さらに,分担者には北大への招へいを利用して,北大の1年目学生向けに開講している一般教育演習「無重力の科学」にも講師として参加していただき,若い学生にたいしてその経験と実験の成果について講演をお願いした。本演習では、受講者自らが航空機による微小重力実験テーマを提案し,すぐれたテーマについては宇宙航空研究開発機構が毎年実施する「航空機を使った学生のための微小重力実験コンテスト」に応募することを目標としている。テーマが採択された場合は、実際に航空機のパラボリック飛行の機会が与えられる。 本研究課題の分担者による講演は,実験の体験者の生の声を聞くことになり,教育効果は非常に大きい。今年度については,本講義の受講生から微小重力実験コンテストに採択されたものはいなかったが,昨年度は2件,一昨年度は1件の採択が出ている。採択された場合は,実験の準備から実施まで,本課題の代表者と分担者が可能な限りンサポートを行うことで,学生に微小重力実験の体験をさせている。 |
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成果となる論文・学会発表等 |
無重力下における氷の結晶成長実験:古川義純,吉崎 泉,ながれ,30 (2011) 25-30. Measurements of growth rates of an ice crystal from supercooled heavy water under microgravity conditions - Basal face growth rate and tip velocity of a dendrite: E. Yokoyama, I. Yoshizaki, T. Shimaoka, T. Sone, T. Kiyota, Y. Furukawa, Journal of Physical Chemistry, B115, 8739-8745 (2011) (Highlighted in Nature Chemistry, 3, P572, August 2011). Stable Growth Mechanisms of Ice Disk Crystals in Heavy Water: S. Adachi, I. Yoshizaki, T. Ishikawa, E. Yokoyama, Y. Furukawa, T. Shimaoka, Physical Review E, PHYSICAL REVIEW E 84, 051605 (2011) Ice Growth Experiments in Japan Experiment Module |