共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 氷天体の衝突付着・破壊・クレーター形成に関する実験的研究
新規・継続の別 継続（平成17年度から）
研究代表者／所属 神戸大学大学院理学研究科
研究代表者／職名 教授
研究代表者／氏名 荒川政彦

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

1

 保井みなみ 神戸大学自然科学系先端融合研究環 助教

2

 鈴木絢子 神戸大学大学院理学研究科 グローバルCOE研究員

3

 嶌生有理 名古屋大学大学院環境学研究科 博士課程後期2年

4

 藤田幸浩 名古屋大学大学院環境学研究科 博士課程前期2年

5

 羽山遼 神戸大学大学院理学研究科 博士課程前期1年

6

 香内晃 北大低温研

7

 田中秀和 北大低温研

8

 山本哲生 北大低温研

研究目的 本研究は17年度から開始し平成22年度には「氷天体の衝突集積・破壊に関する実験的研究：代表　荒川政彦」として採択された研究を継続・発展させたものである．平成22年度の研究では，雪の焼結度と空隙率が及ぼす引っ張り強度と衝突貫入・付着への影響を実験的に調べた．本年度は，引き続き，雪試料の衝突付着に関する実験を継続すると伴に，氷試料への複数回衝突実験による，衝突破壊強度の事前衝突の影響を調べた．
　　
研究内容・成果 【衝突合体条件】衝突実験は室温-15℃に制御した低温室で行った．雪試料は，液体窒素中に微細な水を噴霧して凍結させた30μmの氷微粒子を用いて作成した．雪試料は，直径30mmの雪玉であり，空隙率を40-70%に調整した．弾丸，標的ともに同じ試料を用いた．これらを速度 0.03- 63m/sで正面衝突させ，その時の衝突様式を衝突時のビデオ記録と回収試料の観察から分類した．実験では，衝突速度と空隙率に依存して，反発，付着合体，破壊（一方だけ，双方とも）が観察された．付着合体は空隙率70%以上，衝突速度0.6 - 5m/sで起きた．また，一方破壊は，空隙率50%以下では速度29 - 50m/sで起こり，空隙率50%以上では，その速度は多少小さくなった．反発モードの実験結果を用いて，反発係数の衝突速度依存性を調べた．その結果，衝突速度0.03- 3.5 m/sにおいては，反発係数の明らかな速度依存性は見られず，空隙率の増加に従って，0.4 から 0に徐々に減少する傾向が見られた．さらに，試料の衝突痕から推定された試料の変形量と衝突時の運動エネルギーの関係を調べると変形量はほぼ運動エネルギーに比例することがわかった．また，空隙率の減少とともに変形量は小さくなることがわかった．

【複数回衝突実験】既存クラックが氷ターゲットの衝突破壊強度に与える影響を調べるために，低温室に設置したガス銃を用いた衝突実験を行った．実験では氷弾丸を氷試料に複数回(最大4回)衝突させた．衝突はすべてターゲットの異なる面に行 った．実験温度は-15，-10℃で，衝突速度は140 - 480m/sの範囲で変化させた．氷弾丸は 円筒形で，その質量は1.6gである．氷ターゲットは立方体多結晶氷で．その質量は240 ~1280gである．実験後，回収した衝突破片の質量を計測した．また，カタストロフィ ックに破壊されなかったターゲットは，クラック分布を定量化するために縦波速度と横波速度の測定を行った．その後，次の衝突実験の標的とした．1回目の衝突のエネルギー密度を変化させ，2回目以降のエネルギー密度を一定にした実験を行った．その結果，ターゲットの初期質量(M)で規格化した最大破片質量(mL/M)は，1回目の衝突のエネルギー密度が高いターゲットのほうが無傷の氷よりも小さい値だった．また，衝突回数増加に伴いmL /Mは減少した．そして，事前衝突を受けたターゲットのmL /Mは，既存の氷-氷1回衝突のmL /Mとエネルギー密度の関係と比較するとかなり小さくなっていることが確認された．また， 規格化した破片の質量(m/M)が10^-4以下の破片の積算個数分布は，衝突回数によらず一定であった．これはプレクラックが影響を及ぼすことができる破片サイズには下限が あることを示している．
　　
成果となる論文・学会発表等 Shimaki, Y., Arakawa, M., "Experimental study on collisional disruption of highly porous icy bodies", Icarus 218, 737-750, 2012.
Arakawa, M. and Yasui, M., " Impact crater formed on sintered snow surface simulating porous icy bodies", Icarus 216, 1-9, 2011.
Arakawa, M., Yasui,M., "Measurements of post shock temperature deposited in ice impact crater", in Physics and Chemistry of Ice (Hokkaido Uni-versity Press, Japan), 339-344, 2011.
Shimaki, Y., Arakawa, M., Yasui, M., "Impact experiments on sintered snowballs", in Physics and Chemistry of Ice (Hokkaido University Press, Japan), 379-386 , 2011.