共同研究報告書


研究区分 萌芽研究

研究課題

ドームふじコアを用いた新しい古環境復元法
新規・継続の別 萌芽(2年目/全3年)
研究代表者/所属 北大低温研
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 飯塚芳徳

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

本山秀明 国立極地研究所 教授

2

鈴木啓助 信州大学理学部 教授

3

東久美子 国立極地研究所 准教授

4

植村立 琉球大学理学部 助教

5

三宅隆之 国立極地研究所 研究員

6

平林幹啓 国立極地研究所 研究員

7

倉元隆之 国立極地研究所 研究員

研究目的 南極ドームふじ深層コアを用いた過去数十万年間の古環境復元研究は1994年から約15年にわたり継続して行われてきており、これまでに膨大な成果を創出してきた。その研究の過程で国立極地研究所と低温科学研究所は2大重要拠点としてドームふじコア研究を支えてきた経緯がある。具体的には掘削機の開発、現地で の基地設営、深層掘削、氷コアの輸送、氷コアの保管、氷コアの解析などの研究支援があげられる。本予算を用い、低温研をアイスコア研究の重要拠点のひとつとして引き続き機能させること、ドームふじコア研究に関わる極地研をはじめとする研究機関との連携強化、関連研究の論文化促進などを推進することが目的である。
  
研究内容・成果 平成22年度から始まり、平成23年度末まで、本萌芽研究予算により低温科学研究所は日本を代表とする南極ドームふじ氷床コア研究機関として推進することができた。低温研のスタッフは南極ドームふじ氷コア全量のうち約30%を同所に保管し、適時氷コアの輸送や・解析補助業務に携わった。また、研究代表者はドームふじ氷床コアのコンソーシアムの幹事として、国立極地研究所をはじめとする国内の連携機関との間の研究課題の取りまとめに従事し、今後の研究論文執筆体制について、中心的に貢献することができた。
 研究面では、「氷コアの中に含まれている不純物情報から古気候復元をする」という研究テーマで招集した共同研究者の間で、研究集会を開催(詳細は後述)し議論を深めつつ、各自の成果創出に向けた取り組みをした。2年間の萌芽研究課題の共同研究者によって、下記のような多くの成果論文を公表するとともに、国際学会の招待講演をはじめとする国内外の学会で成果を発表した。成果論文のうち、いくつかには本研究予算を用いて掲載料を賄ったものもあり、本萌芽研究があることにより成し得た成果もあることを明記したい。
2011年12月に萌芽研究課題の共同研究者およびその他の招へいした研究者による研究集会を実施した。参加者25名によって、一人1時間程度の研究紹介・議論を行い、お互いの研究内容を深めるとともに、今後の共同研究推進の枠組みを構築することができた。特に、理化学研究所がプロジェクトを推進する南極浅層コアの研究課題と大気・気象関係者の研究課題のすり合わせが進み、今後の研究進展が期待される有意義な研究集会であった。
現時点で、残念なことに、氷床コア深部の解析結果の研究推進が遅れており、今後も取り組みが必要とされる。本萌芽研究期間中に関連課題の成果の公表には至らなかった。しかしながら、今後「研究集会」の枠組みで、氷床コア深部の共同研究を続け、本萌芽研究として得られた成果・連携を活かし、残された課題にこれまでと同様に携わっていくとともに、低温研が主導する氷床コア研究課題を推進していく。
  
成果となる論文・学会発表等 SAKURAI T. et al.,J. Glaciol. 57(206), 1027–1032, 2011
Iizuka Y. et al. J. Geophys. Res., 2011JD016378, In press
Fujita, S. et al. The Cryosphere, 5, 1057-1081, doi:10.5194/tc-5-1057-2011, 2011
Igarashi, M. et al. Polar Sci., 5, 411–420, doi:10.1016/j.polar.2011.08.001, 2011.
Uemura R. Osamu Abe, Hideaki Motoyama, Geochimica et Cosmochimica Acta, 74, 4919-4936, doi:10.1016/j.gca.2010.05.007, 2010
Sakurai T. et al. International Journal of Spectroscopy, ID 384956
doi:10.1155/2010/384956.
Sakurai T. et al. J. Glaciol., 56 (199), 837-842, 2010.
Uemura R. et al. GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, VOL. 37, L04402, doi:10.1029/2009GL041960, 2010.