共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

 南極地・寒冷環境滞在に伴うヒト身体機能への生理的影響とその臨床への応用
新規・継続の別 新規
研究代表者／所属 首都大学東京　人間健康科学研究科
研究代表者／職名 准教授
研究代表者／氏名 山内潤一郎

研究分担者／氏名／所属／職名
　
氏　　名
所　　属
職　　名

1

 内田直 早稲田大学 教授

2

 藤田聡 立命館大学 准教授

3

 川田茂雄 東京大学 特任講師

4

 橋本健志 兵庫県立大学 特任助教

5

 衣笠竜太 早稲田大学 助教

6

 水野正樹 日本学術振興会 特別研究員

7

 木田圭亮 聖マリアンナ医科大学 助教

8

 宮崎充功 ケンタッキー大学 後博士研究員

9

 大島慶一郎 北大低温研

10

 豊田威信 北大低温研

11

 杉山慎 北大低温研

研究目的 本研究の目的は、北海道大学低温科学研究所の低温室を利用して、寒冷環境におけるヒトの神経筋活動とエネルギー代謝はどのように反応をしているかを検討することである。気温を一定に保てる低温室を用いることでマイナス気温環境におけるヒト生体の生理的な反応を測定することが可能となり、これまでにない新規で独創的な研究成果をもたらすことが期待される。
　　
研究内容・成果 本研究の目標は、寒冷環境下における活動が神経筋活動とエネルギー代謝にどのような順応を引き起こしているかを、筋電図で活動とエネルギー代謝との関係を明らかにすることである。身体を低温環境に暴露して、身体能力やエネルギー代謝能力への効果を段階的に検証していく。

本申請課題の観測組織を構成するメンバーを中心に2009年10月にスポーツ科学未来研究所が設立され、この研究所を軸にして、定期的に研究打ち合わせ、研究報告会が行われている。本研究プロジェクト期間中も各専門分野の協力研究者と適宜連絡をとり、研究を潤滑にすすめている。

国立極地研究所生物圏研究グループ教授・渡邉研太郎氏、同准教授・伊村智氏と共に、北海道大学低温科学研究所教授・大島慶一郎氏、同講師・杉山慎氏、同助教・豊田威信氏とも南極観測研究/低温順応研究にともなう研究協力体制を相互にとっており、寒冷環境セットアップの協力が得られている。
2011年度も引き続き北大低温研共同研究を継続していく予定である。北海道大学低温科学研究所生物環境部門の福井学教授にも新たに共同研究者として協力を得て本研究を推進していく。

2010年8月と2011年度1月に北海道大学低温科学研究所の低温室を利用して基礎実験を実施し、現在解析をすすめている。既に我々は寒冷環境がヒト生体内の生理的反応に及ぼす新たな多くの知見を生理学的、生化学的な実験手法を用いて見出している。いくつかの研究成果については、シンポジウムや学会大会で既に発表、あるいは発表予定である。

主な基礎的な研究成果として、一過性の寒冷暴露に対するヒト生体の安静時代謝応答そしてエネルギー基質利用について検討した結果、一過性の寒冷暴露は代謝応答を亢進することが明らかとなった。安静時におけるヒト骨格筋の筋活動は、寒冷環境下で増加することが明らかとなったが、安静時における筋活動増加のパターンは被験者間で一様でないことが確認された。免疫能、ホルモン応答、筋損傷の程度などを、血液と唾液採取によって検討している。寒冷環境が心理状態に及ぼす影響も心理テストを実施して解析中である。

現在、これらの研究成果は共同研究者と慎重に議論を重ねており、学術論文として投稿する準備を進めている。マイナス気温環境下でヒトが体温を維持するためには代謝を亢進するためにどのようなメカニズムが関与しているか詳細に検討していく必要がある。北大低温研低温室における研究は、急性期の影響を検討しているが、南極地における低温環境において屋外活動を行う場合にも同様な応答が起きていることが推測される。
　　
成果となる論文・学会発表等
○Yamauchi J， Kawada S， Kinugasa R， Morita N， Takizawa K， Yamaguchi T， Sugiyama S， Toyoya S， Imura S， Oshima K. Study on effects of cold environments on human physiology. The 32nd Symposium on Polar Biology， NIPR: 11.30.2010.
○Morita N， Kawada S， Kinugasa R， Takizawa K， Yamaguchi T， Takada S， Sugiyama S， Toyoya S， Imura S， Oshima K， Yamauchi J. Study on human resting metabolism in cold environment. The 32nd Symposium on Polar Biology， NIPR: 11.30.2010.
○Kinugasa R， Kawada S， Morita N， Takizawa K， Yamaguchi T， Sugiyama S， Toyoya S， Imura S， Oshima K， Yamauchi J. Study on influence of human muscle activity during rest in cold environment. The 32nd Symposium on Polar Biology， NIPR: 11.30.2010.
○Yamauchi J. Physiological research in Antarctic environment learning from past and challenging to future. Japanese Antarctic medical care workshop， NIPR: 7.17.2010.