共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

泥炭地における地下水流動のモデル解析に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 山口大学大学院理工学研究科
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 山本 浩一

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

永礼英明 北見工業大 准教授

2

深見浩司 北海道立地質研究所 主任研究員

3

Gatot Eko Susilo Lumpang大(インドネシア) 講師

4

石井吉之 北大低温研

研究目的  寒冷な北海道には未分解の植物遺体が堆積した泥炭地が広大に広がっている.現在,ラムサール条約に指定されているサロベツ湿原や釧路湿原において,乾燥化や地下水の汚染など,泥炭湿地内の地下水位・水質の保全が急務となっている.本研究は泥炭地における地下水流動を数値モデルを通して解明することを目的とする.
  
研究内容・成果  数値モデルを適用するためには,実際の地下水流動のモデル化が必要である.そこで実際のサロベツ湿原の垂直方向の二次元の地下水流動を地下水位の分布から計算した。すべての深さの地下水が地表面の勾配に応じて、低層湿原と高層湿原から水平方向に流れていた。
 上向きの地下水の流れは高層湿原の西側に位置する急勾配の下部に位置する低層湿原(ササ植生領域)と湿地溝で観察された。高層湿原の水平地下水流動は、浅層地下水と深層地下水の混合が短い時間スケールで発生しないことを意味していた。
 高層湿原の浅層地下水は、雨水によって涵養されるため、浅層地下水の電気伝導度は、雨水とほとんど等しかった。すべての地点では、特定の導電性と浅層地下水の栄誉塩濃度は、泥炭の深層地下水とは違って低かった。
 水平方向の地下水流動と栄養の低濃度が浅層地下水でのみ観察されたという事実は、浅い地下水のみが高層湿原の植生を維持していることを示している。また、浅層地下水は、表層のミズゴケ層や表層の比較的新しい泥炭層から排出されることがわかった。 1メートル以上の深部の泥炭層の地下水は、高濃度のリン、溶存有機窒素、アンモニア態窒素を含んでいた。これらの濃度は高層湿原から徐々に低層湿原に向かって増加した。これは、嫌気状態で泥炭の有機態窒素がの溶存有機窒素とアンモニア態窒素に分解されたことを意味していた.一方で湿原下流の湿地溝における自然湧水は泥炭土壌中の地下水とは違ってSiO2が高濃度に含有されていた。これは、鉱物質に富む地下水が別の地下水系から供給されていることを示している.
 湿原表層のミズゴケ植生を維持するためには高層湿原のごく表層に貯留される貧栄養水の流失を防ぐことが極めて重要であると結論した.
 これらの事実をもって,泥炭地地下水の流動構造が明らかになり,高層湿原における地下水の数値モデルの適用が可能になったといえる.実際の数値モデルは現在構築中である.

  
成果となる論文・学会発表等 Koichi YAMAMOTO, Yoshiyuki ISHII, Hiroshi FUKAMI, Ken KOIZUMI, Hideaki NAGARE,Gatot Eko Susilo et al. Survey in the Kalampangan Canal for the clarification of the groundwater movement and the effect of the dam construction, The 2nd JST-JICA International Workshop, 28-29 Sept. 2010.

K.Yamamoto, Gatot Eko Susilo, et al. Local groundwater movement and water quality formative mechanisms in high moor in the Sarobetsu Mire, Hokkaido, Japan, 4th IWA-ASPIRE Conference & Exhibition, Oct, 2011 (submitted)