共同研究報告書
| 研究区分 | 一般研究 |
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研究課題 |
低温氷の光励起ダイナミックス |
| 新規・継続の別 | 継続（平成21年度から） |
| 研究代表者／所属 | 京都大学工学研究科 |
| 研究代表者／職名 | 助教 |
| 研究代表者／氏名 | 薮下彰啓 |
| 研究分担者／氏名／所属／職名 | |||
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氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
衣川高志 | 京都大学工学研究科 | 大学院生 |
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2 |
川崎昌博 | 京都大学工学研究科 | 教授 |
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3 |
渡部直樹 | 北大低温研 | |
| 研究目的 | 星間分子雲では氷によって最表面を覆われた星間塵が豊富に存在する。従来の星間化学研究における化学反応機構を化学ダイナミクスの立場から研究し、新しい観点からの界面光化学反応を見いだし、いままで観測されてはいたが反応機構が不明確であった反応機構を理解する。 二酸化炭素は水やメタノールなどに次いで、星間塵氷に多く含まれている物質の一つである。本年度は、二酸化炭素/水混合氷に真空紫外光を照射し、二酸化炭素の光分解ミクス、並びに混合氷表面の水と二酸化炭素の相対量の変化について明らかにする事を目的として研究を行った。 |
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| 研究内容・成果 | 100 Kに冷却した二酸化炭素/水混合アモルファス氷に157 nmの光分解用パルスレーザー光を照射した。光分解によって真空側に飛び出したCO (v=0，1) 分子、OH(v=0)ラジカル、O(3P2)原子をパルス色素レーザー光で共鳴多光子イオン化(REMPI)して、飛行時間型質量分析計で検出し、各振動・回転準位の成分について測定を行った。 COの生成メカニズムとしては以下の2つの反応が考えられる。 CO2+ hv → CO + O (1) H2O + hv → H + OH (2-1) H + CO2 → CO + OH (2-2) C18O2， H218Oの同位体を用いた実験を行い、COの生成メカニズムが(1)である事を確認した。また、O(3PJ) 原子、OH(v=0)ラジカルはH2Oの光分解によって生成していた。 二酸化炭素の氷への吸着状態として2つ考えられる。一つはアモルファス氷表面上にCO2が物理吸着している場合、もう一つは氷表面の空孔の中にトラップされている場合である。そこで、多くのCO2が空孔の中にトラップされているであろうfresh CO2/H2O、CO2/H2O混合氷の上にさらにCO2を吸着させて物理吸着CO2の割合を多くしたCO2 adlayerの2種類の氷を用意し、光分解によって生成するCOの並進エネルギーと内部エネルギーを測定した。その結果(並進温度(割合)，回転温度)を以下に示す。 fresh CO2/H2O 90±10K(100%)，150±50K CO2 adlayer 1600±400K(70%)，800±200K 350±50K(30%)，--- この結果より、空孔の中にトラップされている場合はCOの並進、回転エネルギーともに低く、物理吸着している場合は、トラップCO2と比較して高い並進、回転エネルギーを持っている事が明らかとなった。空孔の中にトラップされている場合、COが氷との衝突により氷温度(90 K)まで緩和された状態で脱離して来るのに対し、最表面のCO2は生成時のエネルギーを保持した状態で脱離してくるためだと考えられる。 続いて、1時間光を照射した後のCOの並進エネルギーと内部エネルギーを測定した結果(並進温度(割合)，回転温度)を以下に示す。 CO2/H2O after photoirradiation 1600±400K(11%)，800±200K 350±50K(2%)，--- 90±10K(87%)，150±50K この場合、並進、回転エネルギーの高い成分と低い成分が両方検出された。またエネルギーの高い成分は光照射直後はほとんどないが、光照射とともに増加した。この事は最表面のCO2が光照射と共に増加した事を意味している。混合氷に157 nmレーザーを長時間照射すると、CO2とH2Oの吸収断面積の違いにより最表面のCO2が増加し、CO2(上層)-H2O(下層)という分布を持った層構造が形成されることが明らかになった。 |
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| 成果となる論文・学会発表等 |
論文：A desorption mechanism of water following vacuum-ultraviolet irradiation on amorphous solid water at 90 K T. Hama， M. Yokoyama， A. Yabushita， M. Kawasaki， S. Andersson， C. M. Western， M. N. R. Ashfold， R. N. Dixon， N. Watanabe Journal of Chemical Physics 132， 164508 (2010) 学会発表：Formation of ro-vibratinally excited H2 from vacuum ultraviolet photodissociation of ice A. Yabushita， T. Hama， M. Kawasaki， N. Watanabe， M. N. R. Ashfold， H.-Peter Loock 12th International Conference on the Physics and Chemistry of Ice， Sapporo， Japan.， 2010年12月 |