共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
凍結・融解作用による地表物質移動プロセスに関する研究 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 立正大学 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 田村俊和 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
瀬戸真之 | 埼玉大学 | 研究員 |
2 |
曽根敏雄 | 北大低温研 | 助教 |
研究目的 | 凍結・融解作用による地表物質移動プロセスを低温室に設置した人工斜面で実験的に観察・データ収集し,明らかにする.特に雪の有無と斜面物質の移動量に着目する. |
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研究内容・成果 | 実験は発砲スチロール製の箱に厚さ約10cmの土壌を入れた箱Aと箱Bを用意した.傾斜は10度とし,福島県御霊櫃峠の砂礫地で採取した厚さ2cm程度の扁平礫を1つの箱につき,2個置いた.各礫の表面には×印を2カ所付け,この交点の移動を観測した.礫の位置測定にはノギスを用いた.この方法では,測定者が慣れれば±1mm程度の精度で測定できると考えられる.さらに実験斜面の土層中には-3,-5,-8cmにそれぞれ地温センサーを設置し,-3,-5,-8cm深に土壌水分計を設置した.箱Bの斜面には雪を想定して細かく砕いた氷を1〜2cmの厚さで載せた.実験の結果,礫は斜面下方に向かって移動した.このとき,霜柱クリープによる移動量は凍上量×tan10°で計算される.実験で観察された礫の移動量は,この計算値よりも高く霜柱クリープに加え,かなり活発にジェリフラクションが起こったと思われる.特に砕いた氷を載せた箱Bでは移動量が大きい傾向が認められる. 実験全体をとおし,Z方向への持ち上がり,すなわち凍上量とY方向への移動,すなわち斜面下方への移動には正の相関が認められた.Z方向への移動の大部分は霜柱が礫を持ち上げていることによる.したがって,いわゆる霜柱クリープが実験斜面上で発生し,移動量の一部は霜柱クリープによるものと考えて良い.一方で傾斜と凍上量から算出される霜柱クリープによる礫の移動量よりも大きな移動量が観察された.したがって,実験斜面では霜柱クリープが認められるものの,礫の移動量はそれのみでは説明できないことが明らかである. 現在の実験装置では土壌水分と地温のコントロールが難しい.実験室の温度調整が冷風を吹き出す構造になっているため,常に冷風にさらされる表面付近が水分が失われやすい.また,Boxに水や雪を過度に供給すると土壌水分を下げるためにかなりの時間がかかる.限られた期間内で実験の回数を必要なだけ確保するためには,Box内の水分量など,コンディションが悪い状況下でも実験を継続しなければならない.より良い実験結果を得るためには土壌水分を適切にコントロールする方法を開発する必要がある. |
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成果となる論文・学会発表等 |
瀬戸真之・須江彬人・澤田結基・曽根敏雄・田村俊和(2010):低標高斜面 における凍結融解による物質異動プロセス.(日本地球惑星科学連合 2010年大会) SETO Masayuki, SUE Akihito(2010):Laboratory experiment of surface stone displacement under freeze-thaw conditions.(日本地形学連 合トルコ大会) |