共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

酷寒域での降水量把握に向けた降水量計測手法に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 海洋研究開発機構
研究代表者/職名 主任研究員
研究代表者/氏名 杉浦幸之助

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

青木輝夫 気象庁気象研究所 第三研究室長

2

兒玉裕二 北大低温研 助教

研究目的  降水量計により計測される降水量には,風による捕捉損失など様々な誤差が生じ,特に雨に比べて雪の方が風による捕捉損失が大きいことが知られている.そのため,高緯度や山岳域などの強風で厳寒な地域の降水量の実態把握は十分ではない.一方,そのような地域では,降水粒子に非接触なセンサーを用いた降水量計の有効性が示唆されている.
 そこで本研究では,酷寒域での降水量把握に向けて,前方散乱した光の強度測定などによって降水量を算出する装置を野外で試験し,一般にAMeDASで使用されている降水量計などによる降水量との相互比較を通じて,その妥当性を検討することを目的とする.
  
研究内容・成果  降水粒子に非接触なセンサーを用いた降水量計として,現在天気計(Vaisala, PWD12)を低温科学研究所の露場に設置した.バッテリーのみによる稼働期間は2010年2月28日から3月13日まで,AC電源のみによる稼働期間は2010年3月29日から6月3日まで,AC電源とソーラーパネルによるバッテリー充電との併用による稼働期間は2010年6月3日から10月23日までと,様々な電源供給法によるPWD12の稼働性を確認した.いずれの期間でも1時間降水量が得られた.得られたデータのうち,2010年6月4日から7月29日までの56日間,同露場に設置されている転倒ます型温水式雨雪量計(RT-3)による日降水量とを比較した.その結果,RT-3では降水が記録されていない日でも,PWD12は0.01mmから0.86mmの範囲で降水が記録されていた.0.5mm毎に降水が記録されるRT-3に対して,PDW12はより少量の降水を感知することが可能なためである.またRT-3で日降水量が増すとPWD12でも同様に増したが(近似直線R2乗値は0.79),RT-3(風による捕捉損失は未補正)とPWD12とではおよそ3対1程度の差がみられた.今後は得られたすべての期間を解析することで,雨や雪といった降水形態の違いによって,PDW12による降水量特性がどのくらい変動するのかを調べていく予定である.
  
成果となる論文・学会発表等