共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
北海道沿岸河口域における物質動態に関する検討 |
新規・継続の別 | 継続(平成21年度から) |
研究代表者/所属 | 金沢大学環日本海域環境研究センター |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 長尾誠也 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
山本政儀 | 金沢大環日本海域環境研究センター | 教授 |
2 |
三寺史夫 | 北大低温研 | 教授 |
3 |
関 宰 | 北大低温研 | 准教授 |
研究目的 | 寒冷域の湿原は、有機態炭素の貯蔵域として作用するとともに、海洋の生物生産に必要な微量必須元素の鉄の供給源として重要である。本研究では、北海道の湿原から河川へ供給される鉄の河口域での挙動をフィールド観測により詳細に把握し、海洋へ移行する鉄の形態を明らかにすることを目的に、北海道東域の別寒辺牛川と厚岸湖をフィールドに2009年8月と2010年7月に調査を実施した。その結果、塩分が急激に増加する地域で、溶存鉄濃度とともに腐植物質濃度も減少し、溶存鉄は腐植物質の高分子画分とともに凝集沈殿し、この地域の表層堆積物では陸起源有機物の存在が卓越することが示唆された。 |
研究内容・成果 | 試料と方法 厚岸湖では北海道大学厚岸臨海実験所所属の調査船えとぴりか号に乗船し、2009年8月18日に8測点(図1)で表層水を採取し、表層堆積物はエクマンバージ採泥器により、測点AK-15以外の7測点で採取した。2010年には、7月20日に5測点で湖水表層水を採取した。19日には別寒辺牛川水系6測点で河川水を採取した。 今年度は、鉄の配位子としての腐植物質に着目し、三次元蛍光分光光度法、高速液体サイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。堆積物の有機炭素、全窒素含有量は、1M塩酸処理した試料について、元素分析計で測定した。また、有機物の炭素同位体比、全窒素の窒素同位体比は質量分析計で測定した。 結果と議論 厚岸湖水試料の三次元蛍光スペクトルの等高線図は、2010年の試料とともに、2009年と2003年の測定結果も併せて解析した。厚岸湖水試料には、励起波長300-330 nm、蛍光波長410-435nmと励起波長235-245nm、蛍光波長415-430nm、さらに励起波長330-360 nm、蛍光波長455-475 nmに蛍光ピークが検出された。これらの蛍光ピークは河川水、湖水あるいは地下水のフルボ酸に相当するピーク位置に検出され、そのスペクトル形状も似ていることから、フルボ酸様物質と考えることが出来る。なお、2010年に採取した6測点の別寒辺牛河川水系の河川水のフルボ酸様物質は、河口域の測点AK-1とほぼ一致する蛍光スペクトルであった。 厚岸湖水のフルボ酸様物質に相当する励起波長300-330 nm、蛍光波長410-435 nmの蛍光ピークの相対蛍光強度を図2に示した。いずれの観測年においても、別寒辺牛川河口から多少離れた塩分が急激に増加する付近(測点5)で、70〜90%のフルボ酸様物質の相対蛍光強度が減少し、凝集沈着したことを示唆している。この場合、蛍光ピーク位置は、励起波長と蛍光波長ともに最大で15 nm程度、低波長域に検出されている。高速液体サイズ排除クロマトグラフィー分析結果から、フルボ酸様物質の高分子画分が大部分沈着した結果が反映されたと考えられる。 厚岸湖底の表層堆積物(0-2 cm)の測定値は図3に示した。厚岸湖奥の3測点(AK-8、AK-21、AK-27)の平均値は、全有機炭素含有量が1.6 ± 0.5%、C/Nモル比は7.8 ± 0.5、δ13C –19.4 ± 0.4 ‰, δ15N 6.4 ± 0.5‰であり、海洋起源の有機物の特徴を示している。一方、別寒辺牛川河口域の測点では、河川流域の湿原の有機物の特徴から徐々に海洋起源の有機物の寄与が増加する傾向にある。この特徴は、厚岸湖水塩分の増加傾向と調和的である。 |
成果となる論文・学会発表等 |