共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

ASTE望遠鏡搭載用ミリ波・サブミリ波帯多色連続波カメラ光学系の開発
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 北大大学院理学研究院
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 南谷哲宏

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

大島泰 国立天文台野辺山宇宙電波観測所 助教

2

竹腰達哉 北大大学院理学院宇宙理学専攻 D1

3

香内晃 北大低温研 教授

研究目的  銀河の進化や星・惑星形成過程に星間物質がどのように関係しているかを解明するためには、星間物質の分布と性質を明らかにすることが重要であるが、これを観測的に明らかにするためには、ミリ波帯から赤外線領域にわたる広範囲な波長帯の観測データを用いることが必要である。ミリ波帯からサブミリ波帯の観測を地上から効率良く行うため、チリの標高4800mに設置されているASTE望遠鏡用の、ミリ波・サブミリ波帯多色連続波カメラの光学系の開発を行う。
大型楕円鏡 4K冷却光学系 誘電体レンズ
研究内容・成果  光学系は、望遠鏡で集めた電磁波を、効率良く検出器まで導くためのものであり、連続波による高い観測効率を実現するため、多素子、広視野、多波長同時観測可能な光学系の設計と製作を行う。これまでに、波長1.1mm、0.85mmの2波長同時観測用の光学系の設計を行い、それを波長0.85mm、0.45mmの2波長同時観測用光学系へと拡張する設計とした。どちらも、7.5分角の視野内においては十分な結像性能が得られることを確認し、光学系の大部分を共通化したまま、上記2組の同時観測を切り替えて行うことが可能であることを示した。この光学系は、ミラーや誘電体レンズ等の光学素子を、常温部分に設置した常温光学系と、4Kまで冷却した冷却光学系から成り、これらを構成する光学素子は、非常に高い精度が必要とされる。
 我々は今年度、上記光学系設計に基づいて、大型楕円鏡の他、波長1.1mm、0.85mm同時観測用の4K冷却光学系、誘電体レンズ、焦点面モジュール、フィルタ・ホルダー等の、光学素子及び光学素子を保持する治具の設計・製作を行った。
 大型楕円鏡は、広視野を実現するために、反射面直径570mmという大きな物となったが、この設計・製作を行い、表面精度が数ミクロンという、サブミリ波を反射するのに十分な精度を達成した。4K冷却光学系は、2波長同時観測を実現する上で鍵となる部分であり、複雑な配置の光学素子を設計通りに設置し、保持する役割を担っている。波長ごとにモジュール化することで、波長の変更が容易に行えるようにした。誘電体レンズは、レンズ形状を切削するのみならず、表面に反射防止のための微細な溝を彫りこんだ。その他、焦点面モジュール、フィルタ・ホルダーも十分な精度で製作を完了した。これらの製作物を、国立天文台野辺山宇宙電波観測所において冷却デュアに組み込み、日本での最終試験を開始した。今後、日本での最終試験、チリのASTE望遠鏡への搭載を経て、実際の観測を行うこととなるが、ASTE望遠鏡の性能を最大限に引き出す高精度な光学系の実現により、これまでにない広範囲な観測が可能となり、星間物質中の低温ダストの物理状態を明らかにすることができ、銀河進化や星・惑星形成過程の理解に資すると期待される。
大型楕円鏡 4K冷却光学系 誘電体レンズ
成果となる論文・学会発表等 竹腰達哉、南谷哲宏、中坪俊一、徂徠和夫、川村雅之、河野孝太郎、大島泰、田村陽一、江澤元、川辺良平、「ASTE搭載多色連続波カメラの光学系開発」、CMBワークショップ2010、2010.06.07-09、国立天文台三鷹(東京・三鷹市)
竹腰達哉、南谷哲宏、中坪俊一、徂徠和夫、川村雅之、河野孝太郎、大島泰、佐藤立博、田村陽一、廣田晶彦、江澤元、川辺良平、「ASTE搭載多色連続波カメラの光学系開発」、第28回NROユーザーズミーティング、2010.07.21-22、野辺山宇宙電波観測所(長野・野辺山)
大島泰、「ASTE新観測装置」、第28回NROユーザーズミーティング、2010.07.21-22、野辺山宇宙電波観測所(長野・野辺山)
大島泰、「サブミリ波カメラ」、ASTE Science workshop、2010.12.27、東京大学(東京・文京区)
Yoichi Tamura, ASTE TES camera team、”New Multicolor Bolometer Camera for ASTE”、NRO workshop、2011.01.21-22、フォレストイン昭和館(東京・昭島市)