共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

氷床掘削孔の検層及び氷床探査ゾンデに関する研究
新規・継続の別 継続(平成21年度から)
研究代表者/所属 北大低温研
研究代表者/職名 助教
研究代表者/氏名 的場澄人

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

本山秀明 情報・システム機構 国立極地研究所 教授

2

古崎睦 旭川工業高等専門学校 教授

3

高橋弘 東北大学大学院環境科学研究科 教授

4

須藤祐子 東北大学院環境科学研究科 助教

5

田中洋一 (株)ジオシステム 取締役

6

高橋昭好 (株)地球工学研究所 代表取締役

7

宮原盛厚 (株)地球工学研究所 研究員

8

新堀邦夫 北大低温研

9

飯塚芳徳 北大低温研

研究目的  氷河や氷床からアイスコアを採取したあとの掘削孔を調べる(検層)ことにより、氷河・氷床の氷温分布や深さ方向の流動分布などがわかり過去の気温や氷河の流動特性が復元できる。本研究では南極ドームふじ掘削で用いた従来の検層システムを改良し、最新の技術を組み込んだ高精度な測定方法を検討する。また掘削孔を必要としない、自立型の氷床探査ゾンデの実用化への検討を行う。
  
研究内容・成果  現有検層器のトラブルの一つである通信不良は、発信器から送信された信号が3000mのケーブルを通る間に信号の立ち上がりが緩くなり、また立ち上がるときに揺らぎが出て受信機が受信するときに、閾値をまたいで信号が揺らぎ、検出された信号の最初の部分が細かく割れてしまうということが原因だと分かった。その状況を踏まえて、以下のような改良点を挙げた。
(1)アーマードケーブルの変更
 アーマードケーブルは7芯+外側が使えて、現在は、5芯をモーター電源、1芯をロジック電源、1芯を通信、外側をグランドにしている。検層機には、モーター電源が必要ないので、6芯を束ねて通信、1芯をロジック電源、外側をグランドに変更。6芯を束ねることで線が太くなり抵抗値が減少するので、通信信号の劣化を低減させることが期待できる。
(2)測定要素の絞り込み
 現有機の測定項目は13項目ある。研究に必要な要素を絞り込むことで、通信量を減らし、通信信号の劣化を低減させることが期待できる。
(3)ボーレートを落とす
(4)ロガー方式と併用する
 現有機のRS232C出口にメモリーをつけて、通信した内容を記録する。
(5)信号の電流値を上げる
(6)サンプリングタイミングをずらす
 適正な値がとれるようなサンプリングタイミングに調整する。調整はデジタル的に行う。調整をするためには、現地で容易に信号が見られるようにする。
(7)逆向き信号を送って、ノイズを取り除く。
 ノイズが同じようにでるのであれば、同時に反転した信号を送り、受信時にその反転した信号を戻して、もとの信号に足し併せることで、ノイズ部分を相殺できる。今回には間に合わないので、次期検層機の時に検討する。
(8)現場での電源ケーブルなどとの兼ね合いの改良
 通信信号に電源ケーブルなどからのノイズの影響がないのか、現場で確認する。信号を100Vで送っているので、それほど影響はないとの見込みもある。
 また、再観測が予定されている第52次南極地域観測隊での現場での対応に向けての改良点を以下のように検討した。
(1)基盤に信号を読み取るための接点をいくつか作る。そこにオシロスコープをつけて確認できるようにする。どの段階まで適正な信号が送られているのか確認できるようにするため。現場で改良するときに情報がえら得る。
(2)交換する部品をそろえておく。コンデンサーの容量は。今回取り付けたコンデンサーをいろいろ交換する可能性があるのであれば、交換する部分を交換しやすい形にする。現地で行う作業をなるべく容易な作業にする。
 また、自律型検層機について、現時点での問題点はエネルギーが膨大に必要なことだが、これはドームふじの-50度の氷床を3000m掘るという過酷な条件での見積もりであり、諸条件を確認した結果、温暖氷河や浅いコアへの応用は、検討の余地が十分あることが見いだされた。

  
成果となる論文・学会発表等