共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

巨大葉緑体を形成するコケ植物ヒメツリガネゴケの光合成活性測定
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 理化学研究所
研究代表者/職名 基礎科学特別研究員
研究代表者/氏名 岩井優和

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

皆川純 北大低温研

2

滝澤謙二 北大低温研

研究目的 自ら動くことの出来ない植物は,時々刻々と移り変わる生育環境に適応するため,様々なメカニズムを獲得してきた.その中でも,最も迅速な応答メカニズムとして,葉緑体の光環境ストレス応答機構がある.申請者は,現在,コケ植物ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)を用いて,これまでに明らかにしてきた光環境ストレス応答機構の可視化を目指して,イメージング解析を進めている.本共同研究では,P. patensの光合成活性を,生物適応機構学講座・皆川研究室所有の光合成活性測定装置を用いて測定することを目的とする.
ヒメツリガネゴケの巨大葉緑体のステート遷移能の測定結果:WT(通常の葉緑体),WT + amp (巨大葉緑体)  
研究内容・成果 申請者は,コケ植物ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)を用いて,個々の光合成関連タンパク質の可視化を目指して,現在,イメージング解析を進めている.P. patensが光合成タンパク質の可視化に最適な理由の一つとして,アンピシリン処理を施すことで,通常よりも約20倍ほど巨大な葉緑体を形成するという点がある.この最大の利点である巨大葉緑体のチラコイド膜構造は通常のそれと同様であることは電子顕微鏡観察による先行研究から明らかとなっている.しかし,その光合成機能の詳細については全く分かっていないので,皆川研究室所有の光合成活性測定装置を用いてP. patensの巨大葉緑体の光合成機能を測定した.

まず,P. patensの原糸体細胞の観察条件を検討した.薄いセロファンで覆った寒天培地上に生えた原糸体細胞(約20x10 mm)を測定用ガラスプレート(40x17 mm)にはりつけ,表から励起光,裏から測定光を当て,クロロフィル蛍光の測定が可能であることを確認した.

次に,申請者が研究をしてきた光環境ストレス応答機構の一つであるステート遷移能の測定条件について検討した.これまで単細胞緑藻クラミドモナスを用いた実験では,明暗サイクルによるステート遷移の誘導を簡易的に行っていたが,同様の方法で測定した結果,P. patensではステート遷移の誘導があまり起こらなかった.別の方法として,青/近赤外光によるステート遷移の誘導を行ったところ,ステート遷移の誘導が確認できたので,P. patensでは後者の方法で測定を行うことにした.

実際に,野生型とアンピシリン投与による巨大葉緑体を形成した細胞のステート遷移能を比較したところ,クロロフィル蛍光の強度に若干の違いを確認したが,ステート遷移能自体には大きな違いは見られなかった.以上のことから,P. patensの原糸体細胞内で巨大葉緑体を形成しても,ステート遷移能には影響がないことが明らかとなった.このことから,申請者が行っているイメージング解析においても同様の方法を適用できることが確認できた.
ヒメツリガネゴケの巨大葉緑体のステート遷移能の測定結果:WT(通常の葉緑体),WT + amp (巨大葉緑体)  
成果となる論文・学会発表等