共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

X線透過法によるドームふじ浅層コアの密度測定
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 北見工業大学
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 堀 彰

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

飯塚芳徳 北大低温研 助教

研究目的 南極氷床コア解析により過去数十万年スケールの地球の気候・環境変動の解明の取り組みが行われている。氷の年代決定は浅層コアについても重要であるが、特に1年スケールの年代決定が浅層コア解析にとって重要になっている。表面積雪の密度の高低は夏冬に対応することを基に、浅層コアの密度プロファイルから年層を求めることできれば、浅層コアの涵養量の推定や年代決定が可能になる。
本研究では低温科学研究所に設置されているX線透過測定装置を用いてドームふじ浅層コアの密度を高分解能で測定し、特に非海塩性硫酸イオン濃度から決定した年代を利用して密度プロファイル基づいた年層の検出や涵養量の推定を行うことを目的とする。
  
研究内容・成果 低温科学研究所のX線透過率測定装置を使用して、2001年に南極ドームふじ基地で掘削された浅層コア(DF2001コア)深さ13.0m-21.5m(年代で約1640年-1810年)および深さ37.5m-43.0m(同じく約1160年-1290年)の試料に対して、1mm間隔の高分解能で密度測定を行った。これらの試料については理化学研究所の望月らのグループにより、硫酸イオン濃度や硝酸イオン濃度の測定が既に行われており、また、年代決定(DFS年代)も同グループにより行われている。
本研究で得られた密度と硫酸イオン、硝酸イオン濃度の相関を調べたが、それぞれのイオン濃度のサンプリング間隔が密度に比べて細かくないため、詳細については不明であるが、硫酸イオンについて両者には概ね正の相関が見られた。硝酸イオンについて深さ13.0m-21.5m(約1640年-1810年)で両者に正の相関が見られる部分があったが、深さ37.5m-43.0m(約1160年-1290年)では両者に正の相関は明確には見られなかった。これはFujitaら(2009)が指摘している密度の逆転現象との関連があると考えられる。
南極の表面付近の積雪の観測により、夏層は高密度、冬層は低密度になることが報告されており、このことを利用して密度プロファイルの高密度層を夏層、低密度層を冬層としてDF2001 浅層コアの年層解析を試みた。密度からDFS年代を参考にして年層の決定を行った。全体の約40%について密度プロファイルと年層との対応をつけることができた。また、DFS年代を基に密度から年間涵養量を求めたところ、水当量換算で平均約2.5 cm/yとなり、観測値(2.7 cm/y)とほぼ一致した。
今回の試料は、化学解析を行ってから著しく変質してしまったため、年層の検出が困難であったが、新しく掘削した浅層コア試料について今回と同様の解析を行うことにより、年層を決定することが可能であると考えられる。
  
成果となる論文・学会発表等 堀 彰、望月優子、中井陽一、高橋和也、本山秀明、本堂武夫、
DF2001浅層コアの高分解能密度測定とDFS1年代を用いた年層解析、
平成22年度ICC(ドームふじアイスコアコンソーシアム)研究集会、
2011年3月29日、国立極地研究所(立川)
研究集会は震災の影響で延期された。