共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

南極海季節海氷域の季節内変動に関する研究
新規・継続の別 継続(平成18年度から)
研究代表者/所属 京都産業大学
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 馬場賢治

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

青木茂 北大低温研 准教授

2

江淵直人 北大低温研 教授

研究目的 海氷域の大気海洋海氷の相互作用および変動機構を明らかにすることは、気候システムを考える上で重要な課題の一つである。海氷は、その存在の有無によって、大気海洋間の熱フラックス、物質循環を阻害するという特徴を持っており、極域の気候システムを理解するには、重要なパラメーターとなっている。その海氷は、短時間における変動が大きいにもかかわらず、短時間の変動に関する研究はほとんどなく、季節変動や経年変動などの長期間の変動に関するものばかりであった。そこで、季節内程度の時間スケールでの海氷変動について注目しており、その変動が大気場および海洋場と相互作用しているのかを明らかにすることを目的としている。

  
研究内容・成果  南極海における毎日の海氷密接度を用いて解析した結果、南極海西経側の低緯度海氷縁付近において、一月未満の季節内海氷変動が顕著に生じ、また、東に伝播していることがCEOF解析から求められた。その変動は、力学的な効果である風の引きずりによる海氷の漂流だけでは説明がつかず、モデル実験や海氷縁位置の結果によると、海氷の生成・融解は現場海域で行われ、力学的効果より熱力学的効果が卓越して生じていることが示された。つまり、大気の影響を強く受けていることがわかった。
 連続した現場の海洋観測データが得られないため、海氷の季節内変動と海洋場との関係についての詳細な解析は難しい。そこで、人工衛星、現場観測やモデルによる海水温データを利用した1/4度のOISSTのデータセットと海氷密接度データを用いて、先の研究で変動が顕著であった西南極海域に対して解析を行った。冬季の海氷拡大期において、大きく高緯度側に後退することが数年に一度観測されることが分かった。この際、
海水面温度分布の正偏差場が低緯度から海氷に覆われる高緯度海域に移動してくる訳ではなく、強い北風により海氷が高緯度に後退した後、少し時間をおいてからその海域で海水面温度偏差が正となることが現れた。海氷が北寄りの風により、高緯度に押し付けられ海氷密接度が大きくなり、この海氷密接度の大きい海氷域が岸のような役割を果たし、開放水面では風により海洋場に湧昇流が形成されることが推測される。吹続時間が長くなると、湧昇流はより強化される。これが、より海氷の融解に寄与していることが伺える。一方、拡大時には、南風により海氷が低緯度に運ばれ、湧昇流は押さえられ、徐々に海水面温度は低下し、寒気により海氷が生成される。今後は、大気の状態との関連性、海氷のタイプや厚さなどを考慮した変動について解析を進める予定である
  
成果となる論文・学会発表等 K.Baba, S.Minobe, N.Kimura, and ,M.Wakatsuchi, Intraseasonal Variability of Sea-Ice Concentration in the Antarctic with
Particular Emphasis on Wind Effect”. Journal of Geophysical Research, 111, C12023, doi: 10.1029/2005JC003052.2006.

馬場賢治, Bellingshausen Sea付近における海氷と大気, 海洋の季節内変動の関係について, 2009年度日本気象学会秋季大会, 福岡.2009.