共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

高緯度地域におけるエアロゾルの光学的特性から導出する吸収・散乱効果
新規・継続の別 継続(平成14年度から)
研究代表者/所属 富山大学大学院理工学研究部(理学)
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 青木一真

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

藤吉康志 北大低温研 教授

研究目的 北大低温研の屋上(43.08N, 141.34E)に設置されている太陽の直達光と周辺光の放射輝度を自動測定出来るスカイラジオメーターを用いて、1997年からエアロゾルの光学的特性の長期観測を行っている。高緯度地域での長期観測は、観測開始当時、世界でもあまり例がなく、連続的に10年以上のデータの蓄積は重要である。本研究は、高緯度地域のエアロゾルデータの蓄積とエアロゾル粒子の吸収・散乱効果の気候影響についての研究を進める。また、エアロゾル粒子の乾性・湿性沈着効果にも着眼し、大気中に浮遊している粒子と沈着効果によって地上に落ちてくる粒子の関係を示していく。それらの成果を論文等にまとめていく。
Fig 09年3月〜10年12月までの光学的厚さ、オングストローム指数、一次散乱アルベドの月平均値  
研究内容・成果 雲や大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル粒子)やそれらが雲核となって雲を形成する過程は、気候問題解明の基礎データとなる。本観測研究は、1997年7月より北大低温研の屋上において、太陽の直達光と周辺光の放射輝度を測定することによって、エアロゾルの光学的特性などを導出している。これらのエアロゾルデータを蓄積し、気候にどのような影響を与えるかについて解明が必要である。観測は、晴天時の日中に10分おきに連続測定を行い、雲除去や精度向上のため、今年度から1分おきに直達光のみの測定も行っている。測定から得られた生データを一次処理し、エアロゾルの光学的特性(各波長のエアロゾルの光学的厚さや一次散乱アルベド、オングストローム指数)や体積粒径分布などを算出した。Fig.1は、2009年3月から2010年12月までの札幌における0.5 μmのエアロゾルの光学的厚さの月平均値(上図)、オングストローム指数の月平均値(中図)、0.5 μmの一次散乱アルベドの月平均値(下図)を示したものである。今年の結果(青)以外に、昨年度の結果(赤)も図示した。エアロゾルの光学的厚さは、例年同様な春に高く、秋に低い傾向を示した。しかしながら、若干、2009年の方が高い傾向にあるが、2010年11月以降、少し高い状態にあった。2005, 2006, 2009年の報告と同様に、6月の光学的厚さが最大値となった。雲や雨などの影響による影響を受けている可能性もあるが、エアロゾルの粒子の影響により、光学的厚さの値が高くなることが、今年も確認された。2010年6月のオングストローム指数の値が前年度と違いがあるため、今後も引き続き、越境大気汚染物質なのか、ローカルの影響なのか、どこから輸送されてきたのか、研究を進めていきたい。オングストロームの季節変化は、春に低く夏、秋に高い傾向にあり、前年と比べて、月によっては若干の違いは見られた。最後に、一次散乱アルベドは、季節変化を議論するには至っていないが、7月の相違が明瞭であり、2009年は散乱効果により光学的に厚い傾向にあったが、2010年では吸収効果が顕著であり、光学的に薄い傾向が見られた。これらの結果は、鉛直積算された物理量なため、散乱・吸収効果については、さらに詳しく研究を進めて行く必要がある。
Fig 09年3月〜10年12月までの光学的厚さ、オングストローム指数、一次散乱アルベドの月平均値  
成果となる論文・学会発表等 Osada, K., S. Ura, M. Kagawa, M. Mikami, T. Y. Tanaka, S. Matoba, K. Aoki, M. Shinoda, Y. Kurosaki, M. Hayashi, A. Shimizu, and M. Uematsu (2011), Temporal and Spatial Variations of Wet Deposition Flux of Mineral Dust in Japan. 7, 049-052, doi:10.2151/sola.2011-013.
Maki, T., K. Aoki, F. Kobayashi, M, Kakikawa, Y. Tobo, A. Matsuki, H. Hasegawa, Y. Iwasaka (2011), Characterization of halotolerant and oligotrophic bacterial communities in Asian desert dust (KOSA) bioaerosol accumulated in layers of snow on Mount Tateyama, Central Japan. Aerobiologia, DOI 10.1007/s10453-011-9196-0.