共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

季節適応と関連したチョウ目昆虫の表現型可塑性の解析
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 山口大院医学系
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 山中明

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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落合正則 北大低温研

研究目的 タテハチョウ科のヒメアカタテハには金色および銀色を基調色とした黒褐色から淡色の色彩多型の蛹体色が存在する。この蛹体色の淡色化を誘導する因子(淡色化因子)は、5齢幼虫の脳-食道下神経節-前胸神経節連合体および中-後胸神経節-腹部神経節連合体に存在する。本研究では、まず、ヒメアカタテハの蛹体色調節因子の特徴づけ行った。また、ジャコウアゲハの帯糸の体色変化に関与する生理活性物質の検討づけを試みた。
  
研究内容・成果 ヒメアカタテハの淡色化因子が複数種存在するかどうかを確かめるため、ヒメアカタテハの脳-食道下神経節-前胸神経節連合体および中-後胸神経節-腹部神経節連合体より調製した粗抽出液に含まれる淡色化因子の部分精製を行い、淡色化活性の溶出時間の比較を試みた。Superose12カラムゲル濾過クロマトグラフィーでは、各連合体由来の淡色化活性は同じ溶出時間に検出された。続く、C8カラム逆相高速液体クロマトグラフィーでは、それぞれの連合体における淡色化活性が、異なる溶出時間に検出されたので、それぞれの連合体に淡色化因子が1種類ずつ存在する可能性が示唆された。さらに、C4カラム逆相高速液体クロマトグラフィーにおいても、各連合体でそれぞれ異なる溶出時間に淡色化活性が検出された。
また、淡色化因子がタテハチョウ科のチョウに特異的な因子であるのか、他の科のチョウにも存在するのかどうかを検討するためタテハチョウ科のヒオドシチョウ、キタテハ、シロチョウ科のモンシロチョウ、アゲハチョウ科のナミアゲハおよびカイコガ科のカイコガ成虫の脳神経節連合体から調製した2%NaCl粗抽出液をヒメアカタテハ結紮腹部に投与した。その結果、ヒオドシチョウおよびナミアゲハの脳-食道下神経節-前胸神経節連合体および中-後胸神経節-腹部神経節連合体から淡色化活性が認められた。また、キタテハの脳およびモンシロチョウの中-後胸神経節-腹部神経節連合体から淡色化活性が認められた。しかし、カイコガ成虫の脳-食道下神経節複合体には、淡色化活性は認められなかった。このことから、淡色化因子はチョウ類の脳神経系に広く存在する可能性が示唆された。
 ジャコウアゲハの帯糸の体色変化に関与する生理活性物質の検討づけのため、ジャコウアゲハ5齢幼虫の絹糸腺を摘出し、絹糸腺粗抽出液を作成した。粗抽出液のSDS-PAGE後、カイコガ幼虫体液のフェノールオキシダーゼ抗体によるウエスタンブロッティングを行ったところ、交差反応を示すバンドが得られた。更なる検討が必要ではあるが、ジャコウアゲハの帯糸の体色変化にフェノールオキシダーゼが関与している可能性が示唆された。
  
成果となる論文・学会発表等