共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
積雪変質モデルを用いた積雪底面からの流出量の面的予測の検証 |
新規・継続の別 | 継続(平成20年度から) |
研究代表者/所属 | 防災科学技術研究所 |
研究代表者/職名 | 主任研究員 |
研究代表者/氏名 | 山口悟 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
平島寛行 | 防災科学技術研究所 | 研究員 |
2 |
石井吉之 | 北大低温研 | |
3 |
兒玉裕二 | 北大低温研 |
研究目的 | 積雪内部の水の移動のモデル化は, 雪氷災害の予測のみならず水文学的にも非常に重要である. 本研究では, 積雪内部の水の移動のモデルの精度向上のために, 防災科学技術研究所が改良を進めている積雪変質モデル“SNOWPACK”で計算を行った積雪底面からの流出量および河川の流出量に関して, 実測値との比較を行い, モデルの検証および精度向上を目指す. |
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研究内容・成果 | 2004/2005冬季の母子里の気象データを入力データとし, 従来の積雪変質モデル(SNOWPACK)を使って積雪底面からの流出量の計算を行った. その結果, モデルで計算された底面流出量の各ピークのタイミングは, 実際に母子里においてライシメータで測定された底面流出量のデータと比較的よく一致することがわかった. そのため従来のモデルは, ある程度正確に底面流出量が計算できると考えられる. しかし実際の観測では, ピークが生じた後, 底面流出量は緩やかに減少する傾向があるのに対し, モデルの計算結果ではピーク後急速に流出量が減少を生じるなど, 従来のモデルの問題点も明らかになった. 計算結果でピーク後に急激に底面流出量が減少する原因の一つは, モデル内の水分移動の取り扱いが単純化されているためであると考えられる. 従来のSNOWPACK内の積雪内部の水の移動の計算では, 不飽和流は考慮されていない. 一方, 実際の積雪内部の水の移動の多くは不飽和状態で生じる. そこで実験結果をもとに不飽和流を考慮した水分移動モデルを構築し, SNOWPACKの改良を行った(以下, 改良版SNOWPACK). また改良版SNOWPACKの性能を試験するために, 母子里のデータを入力データとして計算を行い, どの程度計算結果が改善されるかの検討を行った. その結果, 改良版SNOWPACKを使った計算では, 観測と同じようにピーク後の底面流出量が緩やかに減少する事が分かった. 従って, 不飽和流の概念の導入はモデルの本質的な改良につながると言うことが明らかになった. 改良版SNOWPACKを使った計算結果と観測結果との間にも, まだいくつかの相違点が存在する. それらに関して議論を行った結果, ・入力データの問題 ・不飽和透水係数の密度依存性の考慮 などについて, 今後より深い考察が必要であるという結論に達し, モデルの改良に向けて今後も情報交換をすることになった. また, 点の気象データを面的に広げる手法および各gridで計算されたSNOWPACKの結果からどのように河川流量を計算するかに関する議論では, 現在スイスの研究所が開発を進めているAlpine 3Dを使用したらどうかという結論に達した. これらをふまえてAlpine 3Dが日本の積雪地域のも応用出来るかの検証も含めて, 今後も継続的に共同研究を進めていく事になった. |
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成果となる論文・学会発表等 |