共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
しぶき着氷を構成する氷の供給源に関する研究 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 北海道教育大学 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 尾関俊浩 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
石井吉之 | 北大低温研 |
研究目的 | しぶき着氷は船体着氷や防波堤灯台など航行安全設備への着氷として知られている.現在,北極海の海氷が減少し北極海航路が現実味を帯びてきていることから,今後開氷域でのしぶき着氷の発生回数が増加することが予想される.海洋や湖で構造物に発達するしぶき着氷は,大気着氷雪と湖水・海水の飛沫着氷が複合していると考えられ,結晶構造に反映している.その供給源と結晶構造の違いをδ18O解析より明らかにする. |
研究内容・成果 | 本共同研究では,以下の4つを行った. (1)しぶき着氷のサンプル採取をおこなった.塩水による海水飛沫着氷のサンプルは防波堤灯台から採取した.また淡水によるしぶき着氷のサンプルは猪苗代湖および十和田湖から採取した(図1).採取したサンプルは融解や蒸発が進まないように車載式冷凍庫または冷凍宅配便により北海道教育大学札幌校に輸送した. (2)北海道教育大学札幌校の低温室において厚片を作成し,しぶき着氷の断面の結晶構造解析を行った. (3)北海道大学低温科学研究所において,同サンプルを用いて,異なる構造に着目してδ18Oの解析を行った. (4)δ18Oの値からしぶき着氷を構成する氷層について降雪起源か,海水・湖水起源かについて検討した. 各サンプル採取地において着氷,海水または湖水,積雪を採取しδ18Oを比較した結果,次のような傾向があった.猪苗代湖のサンプルでは,湖水,積雪共にδ18O は約-10であったのに対し,しぶき氷は約–8と明らかに重かった.十和田湖のサンプルでは,湖水が約–8,積雪が約–12であるのに対し,しぶき着氷は約–7と明らかに重かった.一方,海水飛沫着氷のサンプルでは,海水が約0,積雪が約–11に対し,しぶき着氷は約+1と明らかに重かった.降雪がしぶき着氷の形成に大きく関与している場合は固体の付着であり,同位体分別は起こらないと考えられる.しかしいずれの場合もしぶき着氷のδ18Oは積雪の値よりも明らかに重かったことから,着氷形成への降雪の関与は大きくないことが示唆され,その傾向は特に海水飛沫着氷において顕著だった.また,いずれのサンプルにおいてもしぶき着氷のδ18O値が海水や湖水の値より大きいことから,しぶきが着氷体表面を液膜状に流下して着氷が形成されるときに同位体分別が起こっていることが示唆された.この研究結果はしぶき着氷の初生から発達の成長機構を解明する一助となった. |
成果となる論文・学会発表等 | 準備中 |