共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

スノージャム採取用コアサンプラーを用いた融雪観測技術の確立
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 国立環境研究所
研究代表者/職名 室長
研究代表者/氏名 野原精一

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

福原晴夫 新潟大学 教授

2

福井学 北大低温研

3

新堀邦夫 北大低温研

研究目的 尾瀬ヶ原や尾瀬沼では赤雪現象が知られ、それは多様な生物群集の複雑な系である。しかし、堅い氷板やスノージャム(ザラメ状の雪と水の混合物)でできた積雪をきれいな不攪乱コアで採取することが難しいため融雪期の環境計測や生物の増殖等について未解明である。
 そこで研究に必要な不攪乱コアサンプラーを生物群集研究者と雪氷コア開発者とで検討を重ね、新しい不攪乱コアサンプラーを開発し融雪観測技術の確立をめざすものである。その新しいコアサンプラーを使って積雪期における雪氷構造メタン発生、赤雪の藻類、アカシボ現象の物質と水循環、アカシボ発生と鉄の酸化還元反応、アカシボの微生物生態学などの研究進展が期待される。
土壌コアサンプラーとアカシボ 尾瀬沼の積雪 氷雪コアサンプラー
研究内容・成果  融雪期に、雪氷表面が赤、黄,時に黒く着色する現象は一般に彩雪現象と言われ、古くから世界の氷河・積雪地域で知られてきた。彩雪の原因として、Clamydomonusなどの緑藻類が代表としてあげられているが、細菌類やミミズ類,水生昆虫などの多様な生物も含み、独特の生態系であることが氷河に発生するアカユキで明らかになり温暖化との関わりについて注目されてきた。尾瀬ヶ原や尾瀬沼ではアカユキの一種であるアカシボ現象が知られ、このアカシボ雪中にはこれまで知られていない藻類Hemitomaや細菌,ミミズ類,ユスリカ幼虫など多様な生物群集を含み、複雑な系をなすことが明らかになった。特に分子生態学的手法や情報学的手法を用いた解析では、アカシボ微生物群集の主要なメンバーは氷河等の他の低温環境と共通し、彩雪は融雪を早めることが示された。
 雪氷研究で用いられているコアサンプラーと土壌コアサンプラーを融雪期の尾瀬沼の積雪において比較検討した。比較的良く取れるが、雪氷コアサンプラーは金属製で重量が重く中が見えないという問題点が確認された。そこで既存のコアサンプラーを改良して設計図を作成し、切削部はステンレス製の同じ形にし、本体はポリカーボネイト製にした新しいコアサンプラーを試作した。
 今後、5月の融雪時に再度採取を試み、その新しいコアサンプラーを使って積雪における雪氷構造メタン発生、赤雪の藻類、アカシボ現象の物質と水循環、アカシボ発生と鉄の酸化還元反応、アカシボの微生物生態学などの研究をすすめるものである。本研究によりアカシボ生物群集の増殖の解明、雪氷の生態学の発展に寄与できることが期待され、また地球温暖化の生態系影響などの課題についても将来発展させうることなどの成果が期待された。
土壌コアサンプラーとアカシボ 尾瀬沼の積雪 氷雪コアサンプラー
成果となる論文・学会発表等 Kojima,H., H. Fukuhara, M. Fukui: Community structure of microorganisms associated with reddish-brown iron-rich snow. Systematic and Applied Microbiology 32(6): 429-437.2009
吉井健太,小島久弥,福井学:高度に酸化鉄を集積した積雪中のメタン酸化微生物.日本生態学会.東京.2010年3月