共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
北海道沿岸河口域における物質動態に関する検討 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 金沢大学環日本海域環境研究センター |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 長尾 誠也 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
山本政儀 | 金沢大環日本海域環境研究センター | 教授 |
2 |
三寺史夫 | 北大低温研 | 教授 |
研究目的 | 寒冷域の湿原は、有機態炭素の貯蔵域として作用するとともに、海洋の生物生産に必要な微量必須元素の鉄の供給源として重要である。しかし、河口域では淡水と塩水の混合により微量元素の沈着等が起こり、移行形態が変化することが知られている。本研究では、北海道の湿原から河川へ供給される鉄の河口域での挙動をフィールド観測により詳細に把握し、海洋へ移行する鉄の形態を明らかにすることを目的に北海道東域の別寒辺牛川と厚岸湖をフィールドに2009年8月に調査を実施した。 |
研究内容・成果 | 1. はじめに 寒冷域の湿原は、有機態炭素の貯蔵域として作用するとともに、海洋の生物生産に必要な微量必須元素の鉄の供給源であり、陸域と海洋間を結びつける河口域での物質動態は重要な検討課題である。溶存鉄の配位子として作用する高分子電解質の有機物である腐植物質は、湿原からの供給が高く、水環境での鉄の移行動態を支配する要因の1つと考えられている。そのため、陸域から海洋への鉄の移行動態の解析には、腐植物質との関係を考慮する必要がある。本研究では、北海道東部の別寒辺牛湿原河川とその河口域、さらに厚岸湖をフィールドとし、鉄と腐植物質の移行動態に関する調査を行った。 2. 試料と方法 別寒辺牛川は主に低層湿地から構成される別寒辺牛湿原を流れる集水域683.4 km2、流路長69.9 kmの河川である。厚岸湖は面積32 km2、周囲長25 km、平均水深1.5 mで別寒辺牛川からの流入が主な淡水の供給源である。 厚岸湖では北海道大学厚岸臨海実験所所属の調査船えとぴりか号に乗船し、平成21年8月18日に8測点(図1)で表層水を採取し、CTDで塩分、水温を測定した。また、翌日には別寒辺牛川上流(Be1)と下流(Be2)の測点で同様な調査を実施した。 水試料は鉄や有機物の溶存形態を検討するため、GF/Fフィルター、孔径0.45µmのヌクレオポアフィルター、および孔径0.02µmのアノデスクフィルターを使用した。鉄は原子吸光法により、腐植物質は三次元蛍光分光光度法、高速液体サイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。また、紫外吸収有機物に関しては紫外-可視分光光度法により測定した。 3. 結果と議論 図2にはGF/Fフィルターで濾過した試料を分析した結果を示した。別寒辺牛川下流(Be2)では上流(Be1)に比べて溶存鉄濃度が約3倍高く、測点間に広がる湿原からの寄与が示唆される。一方、河口域での溶存鉄濃度は、塩分3.58までは約20%の減少、塩分が25.4まで急激に増加する測点Ak3とAk5間で急激に減少し検出限界以下(0.01 mg/l以下)であった。しかしながら、厚岸湖出口の測点Ak15では鉄は0.4 mg/l存在し、塩分が若干低いため、河口域からの直接的な供給が考えられる。 紫外吸収有機物の簡易指標としての280 nmの吸光度、蛍光波長310-350 nm/蛍光波長430-465 nmのフルボ酸様物質の相対蛍光強度(RFI)は溶存鉄濃度と同じような変動傾向を示した。また、図3に示すように、高速液体サイズ排除クロマトグラフィー測定の結果、測点Ak5では高分子画分が沈着していることが明らかである。これらの結果より、河川から移行してきた鉄-腐植物質錯体は河口域でその高分子画分が凝集沈殿し、低分子画分の鉄-腐植物質錯体のみが溶存態として厚岸湾へ移行することが考えられる。 |
成果となる論文・学会発表等 |