共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

氷核性バクテリアが氷の成長形態に与える影響の実験的研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 産総研
研究代表者/職名 主任研究員
研究代表者/氏名 灘浩樹

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

古川義純 北大低温研

研究目的 本研究は、バクテリア細胞表面の氷核タンパク質(Ice-Nucleation Protein、INP)が氷の成長形態へ与える影響を実験的に調べることにより、INPの分子機能とバクテリアの耐凍結性との関係を解明するための新しい学術的知見を得ることを目的とする。
  
研究内容・成果 本研究では、氷核性バクテリア(Xanthomonas campestris)を混入した過冷却水から成長する氷の成長形態を、高解像度光学顕微鏡を用いたその場観察実験により調べる。温度は-0.5〜-0.05℃の数点に対して、またバクテリア濃度は0.5〜2mg/mlの数点に対して実験を実施し、成長形態の温度依存性および濃度依存性を解析する。実験は、低温科学研究所が所有する結晶成長装置を用いて実施する。
実験の結果、純水からの成長の場合と同様に平坦なベーサル面を持つ円盤状あるいは六角樹枝状の成長形態が現れ、不凍タンパク質水溶液からの実験で観察されるような劇的な成長形態の変化は認められなかった。しかし、成長速度の異方性を測定した結果、濃度の上昇とともにベーサル面の成長速度が劇的に減少し、それに伴いc軸に垂直な方向の成長速度が劇的に増加することがわかった。すなわち、バクテリアは氷の成長形態を非常に薄い円盤もしくは六角樹枝へと変化させる添加物であることが明らかになった。
本研究で見られた成長速度の異方性変化は、バクテリアINPのベーサル面吸着に起因すると考えられる。もし本当にINPがベーサル面に選択的に吸着したのであれば、INPの原子配列面は部分的にベーサル面格子とマッチする構造をとっていると想像される。しかし、成長速度の異方性変化の原因やINP構造にはまだ不明な点も多く、今後更に詳しく追求していくことが望まれる。
  
成果となる論文・学会発表等