共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

国際極年期間の両極域での海洋・海氷観測研究の総括
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 東京海洋大学海洋科学部
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 北出裕二郎

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

菊地隆 海洋研究開発機構地球観測研究センター サブリーダー

2

伊東素代 海洋研究開発機構地球観測研究センター 技術研究副主任

3

渡邉修一 海洋研究開発機構地球観測研究センター グループリーダー

4

佐々木健一 海洋研究開発機構地球観測研究センター 研究員

5

牛尾収輝 国立極地研究所 准教授

6

平野大輔 東京海洋大学海洋科学部 博士後期課程大学院生

7

後藤晴香 東京海洋大学海洋科学部 博士前期課程大学院生

8

深町康 北大低温研

9

大島慶一郎 北大低温研

10

青木茂 北大低温研

研究目的  2007年3月から2009年3月の国際極年の期間中に実施された国内機関の両極域での観測研究について、本研究課題に参画している研究機関間の共同で実施されたものを中心に、成果の報告を行い、議論をすることを通して、今後の更なる共同研究観測の可能性を模索し、その計画を立案することを目的としている。
  
研究内容・成果  本研究課題の目的のための情報交換・議論の場とするための研究集会を2010年1月8日に実施した。まずは、北極海における研究の報告として、海洋開発研究機構の伊東氏から、昨年の「みらい」航海およびノルウェー、カナダの砕氷船による共同観測の内容についての報告があった。この「みらい」航海では、低温研が共同研究のために提供した超音波氷厚計を含む係留系の設置を東シベリア海において行なっている。また、一昨年の「みらい」航海において得られたデータを用いた北極海におけるモード水の生成についての研究報告および来年予定されている「みらい」の北極航海の計画についての説明もあった。この航海には、昨年の航海で設置した氷厚計を含む係留系の回収および再設置も組み込まれている。次に、ゲストとして参加した海洋研究開発機構の川口氏から、チャクチ海の領域モデルによる冬季太平洋水の生成についての研究報告が行なわれた。このモデルの領域内では、昨年夏から低温研とアラスカ大の共同で、係留系を用いた連続観測が開始されており、来年夏に予定されている係留系の回収に成功すれば、モデル結果の妥当性の評価やモデルの更なる改良に繋がることが期待される。更に、海洋開発研究機構の佐々木氏から昨年「みらい」によって行なわれた南太平洋のWOCE P21測線の再観測によるフロンの測定結果についての速報の発表がなされた。
 引き続き、南極海における研究の報告を行ない、まずは環境科学院院生の山本氏から、ケープダンレー沖を中心とした東南極海における南極底層水について、ヒストリカルなデータと最近の東京海洋大と低温研が共同で行なった海鷹丸の航海などで得られたデータを用いた空間分布の特徴についての発表が行なわれた。続いて、東京海洋大の北出と平野氏が、2009年の海鷹丸の航海で得られたデータを用いて、ケープダンレー沖における南極底層水の変質機構と混合過程についての報告をそれぞれ行なった。ケープダンレー沖における観測は来年度以降も継続されるため、これらの研究で得られた新たな知見は、研究計画の最終決定に大きく資することになる。東京海洋大の後藤氏からは、最近の海鷹丸や白鳳丸の航海で得られた昭和基地沖のリュッツホルム湾におけるデータを用いた水塊特性についての研究報告がなされ、最後に北大低温研の嶋田氏と環境科学院院生の金田氏からはそれぞれ、オーストラリア・南極海盆とロス海における水塊特性の長期変動についての研究成果が発表された。
 今回の研究集会において行なわれた殆どの研究報告は、国際極年期間における本研究課題参加機関の共同観測研究の成果であり、低温研の共同研究の枠組みで行なってきた国内のネットワークの構築が非常に有効であったことが実感出来た。
  
成果となる論文・学会発表等 大島慶一郎(北大低温研)・深町康(北大低温研)・青木茂(北大低温研)・清水大輔(北大低温研)・田村岳史(北大低温研)・若土正曉(北大)・北出裕二郎(海洋大科)・平野大輔(海洋大科)・牛尾収輝(極地研)・橋田元(極地研)・吉川久幸(北大地球環境)・中岡慎一郎(環境研)、新たに発見された南極底層水とそれに関わる海氷生産の直接観測-ケープダンレープロジェクト-、2010年度日本海洋学会春季大会、東京、2010年3月29日

深町康(北大低温研)・大島慶一郎(北大低温研)・青木茂(北大低温研)・北出裕二郎(海洋大科)・田村岳史(北大低温研)・若土正曉(北大)、係留観測による南極海ケープダンレー沖における南極底層水について、2010年度日本海洋学会春季大会、東京、2010年3月29日

北出裕二郎(海洋大科)・平野大輔(海洋大科)・大島慶一郎(北大低温研)・深町康(北大低温研)、ケープダンレー沖で観測された南極底層水の特性と分布、2010年度日本海洋学会春季大会、東京、2010年3月29日