共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

海洋大気中の水溶性有機物の組成とダイナミクス
新規・継続の別 継続(平成19年度から)
研究代表者/所属 北大低温研
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 河村公隆

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

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Chen, Jing 中国科学院地球化学研究所 大学院生博士課程

研究目的 西部北太平洋上の大気成分は、アジア大陸の影響を強く受ける結果、揮発性有機物をはじめとして様々な汚染物質を含んでいる。本研究では、化石燃料の燃焼やバイオマス燃焼によって大気中に放出される有機物およびその酸化生成物である低分子カルボン酸に着目し、海洋大気中での分布と存在状態(気相・エアロゾル相の分配)を明らかにし、エアロゾル生成に果たすその役割を評価する。
  
研究内容・成果  小笠原諸島・父島にて採取した海洋エアロゾル試料(1990-1993年、2週間毎に採取)を分析し、13種の糖類をGC/MSを用いて測定した。脱水糖としてレボグルコサン、ガラクトサン、マンノサン、一次糖としてグリセロール、エリスリトール、キシロース、アラビトール、フルクトース、グルコース、マンニトール、イノシトール、スクロース、トレハロースを検出した。これらの糖・糖アルコールの全濃度は、1.65-73.2 ngm-3 (平均16.4 ngm-3)であった。主成分はグルコースであった。一次糖の濃度は、1.37-67.4 ngm-3 (14.1 ngm-3)であり、6月に最大、11月に最小を示した。アラビトール、フルクトース、グルコース、マンニトール、イノシトール、スクロースおよびトレハロースは、春・夏により高い濃度、秋・冬に低い濃度を示した。これに対して、バイオマス燃焼のトレーサーである脱水糖の濃度(0-5.62 ngm-3, 0.75 ngm-3)は、冬/春に高い濃度を示した。このことは、脱水糖は、アジア域から偏西風によって輸送されたことを示している。キシロース(0.01-0.48 ngm-3, 0.14 ngm-3)は、脱水糖に似た季節変化を示した。一方、グリセロールとエリスリトールは夏に高い濃度を示した。これは冬の濃度の4-6倍であった。このことは、これらの糖は海洋微生物起源または光化学反応によって生成したことを示唆している。本研究は、糖類は海洋エアロゾルの重要な成分であること、その組成と季節変化は海洋エアロゾルの起源と輸送経路を明らかにする上で有用な情報を与えてくれることを明らかにした。
  
成果となる論文・学会発表等