共同研究報告書提出

共同研究報告書

研究区分	一般研究
研究課題	気象の時間変動と道路構造別冬期路面状態の予測に関する研究
新規・継続の別	継続（平成19年度から）
研究代表者／所属	（独）土木研究所寒地土木研究所
研究代表者／職名	上席研究員
研究代表者／氏名	葛西聡

研究分担者／氏名／所属／職名
	氏　　名	所　　属	職　　名
1	高橋尚人	（独）土木研究所寒地土木研究所	総括主任研究員
2	徳永ロベルト	（独）土木研究所寒地土木研究所	主任研究員
3	舟橋誠	（独）土木研究所寒地土木研究所	研究員
4	兒玉裕二	北大低温研

研究目的	近年では、冬期道路管理にかかる予算制約や凍結防止剤散布による環境負荷懸念等の制約条件から、冬期道路管理をより効率的に実施することが求められている。例えば、凍結路面対策として施されている凍結防止剤散布は、全線において実施するのではなく、路面凍結の発生しやすい箇所等に重点的に散布を行うことが望ましい。このような凍結路面対策を的確かつ効率的に実施するためには、路線のどこが凍結しやすいかを把握しておく必要がある。本研究では、夜間から未明にかけて多く実施される凍結防止剤散布等の冬期道路管理を的確かつ効率的に実施するため、夜間における路線の道路構造別路面温度分布の予測手法の構築を目的としている。
表1　パスキル安定度区分　図1　路面温度比較図（1回目）　図2　路面温度比較図（2回目）
研究内容・成果	本研究では、パスキル安定度を用いて路線の夜間の路面温度分布推定手法を検討する。今年度は、夜間の路面温度分布を求めることを目的としているため、表1に示す夜間の部分を適用することとした。なお、路面温度分布を求める具体的な方法は以下のとおりである。 ①サーマル・マッピングを行う。 ②サーマル・マッピング結果をパスキル安定度毎に分類し、路面温度差分布を求める。 ③対象時刻のパスキル安定度の路面温度差分布に、②で求めた路面温度の差を加えて対象時刻の路面温度分布を推定する。　本研究では、一般国道5＆274号（L＝20.23km）を調査対象区間とした。当該区間では、走行方向によって路面温度分布特性が異なるため、両方向でサーマル・マッピングを行っているが、本報では東から西方向に走行した結果を紹介する。この路線では、2006年と2007年冬期に計9回のサーマル・マッピングを行っており、その際のパスキル安定度は、Dが3回とGが6回であった。　今回求めた路面温度分布図による路面温度の予測精度を検証した。今回は、2009年2月4日早朝に行った2回分のサーマル・マッピングデータを用いて検証した。サーマル・マッピング実施時の雲量は1及び現地の風速は2m/s未満でともにパスキル安定度はGであった。パスキル安定度Gの路面温度差分布図に実測路面温度を重ね、1回目と比較した結果を図1及び2回目と比較した結果を図2に示す。　精度検証のため、RMSEと誤差の最大値を求めた。1回目では、RMSEは0.9℃及び誤差の最大値は3.0℃であった。2回目では、RMSEは0.7℃及び誤差の最大値は2.3℃であった。局所的に大きな誤差が生じているが、RMSEが1℃以内と良い精度が得られたといえる。また、1回目では誤差1℃未満に全データの74.2%、誤差2℃未満に97.7%が含まれた。2回目では、誤差1℃未満に全データの86.4%、誤差2℃未満に99.5%が含まれる結果となった。なお、2℃以上の大きな誤差が生じている地点は、1回目の場合はKP8.0～9.0区間で、2回目の場合はKP276.9付近であった。　パスキル安定度毎に路面温度分布パターンを作成する手法は、夜間における路線の路面温度分布を推定する上で有効であることが確認できた。しかし、路面温度の乖離が大きかった地点の誤差の原因が不明であるため、今後、更なる分析を行う必要がある。また、引き続きサーマル・マッピングデータを蓄積して精度向上に努めるとともに、これまでサーマル・マッピングを行ってきた範囲では観測されなかったパスキル安定度E及びFの路温分布図の作成と精度検証を行う必要がある。更に、札幌市の冬期気象条件では昼間も凍結路面が発生している場合があるため、昼間の路面温度分布予測手法についても検討する必要がある。
表1　パスキル安定度区分　図1　路面温度比較図（1回目）　図2　路面温度比較図（2回目）
成果となる論文・学会発表等	Naoto Takahashi， Roberto Tokunaga and Naoki Nishiyama: Method for Predicting Road Surface Temperature Distribution Using Pasquill Stability Classes， 14th SIRWEC， Quebec - Canada， February 2010.