共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
大気中に見られる小スケールの渦の検出と実態把握 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 気象研究所 |
研究代表者/職名 | 研究官 |
研究代表者/氏名 | 猪上華子 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
鈴木修 | 気象研究所 | 室長 |
2 |
藤吉康志 | 北大低温研 |
研究目的 | 大気中には、竜巻や塵旋風からメソスケールの渦状降雪雲などの渦状擾乱、低気圧や台風など様々なスケールの渦が観測される。これらのうち、時間・空間スケールが小さい、メソスケールまでの小スケールの渦についてはこれまでまとまった解析があまりなされていない。本研究では観測データからアルゴリズムを用いて小スケールの渦の検出を行い、検出された渦の実態把握を目的とする。 |
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研究内容・成果 | 今年度は、北海道大学低温科学研究所で観測されたXバンドドップラーレーダーを用い、小スケールの渦の自動検出を試みた。検出には、気象研究所で開発されたメソサイクロン検出アルゴリズムをベースとして用い、小スケールの弱い渦を検出するために、アルゴリズムのパラメータの変更を行った。 2006年1月23日午前6時頃から8時頃にかけて、北海道東部のオホーツク海沿岸に沿ったシア流に伴って帯状雲が形成され、シアライン上で小スケールの渦が観測された事例を扱った。紋別に設置されたXバンドドップラーレーダーのドップラー速度データにアルゴリズムを適用した。その結果、高度・時間連続性の良い複数の渦を検出することができた。 当該事例で検出された渦は直径が約400mから2kmと小さかったが、長いもので80分程度も持続して検出された。一方で接線速度は3-7m/sと弱く、渦度も10の-2乗から-3乗 /sと小さいものであった。渦は高度方向には下層約400mから約1.3km程度まで達しており、背の低い雪雲(エコー頂約2km)の上層まで渦が達していた。検出された渦の特性を、冬季日本海側の庄内平野沖で観測・報告されている複数事例の小スケールの渦と比較した。直径は同程度であるのに対し、移動速度や接線速度は半分以下、渦度は1オーダー小さく、当該事例で検出された渦は、より弱い渦であった。一方で、寿命は庄内沖で観測されたものに比べて倍以上長いものもあった。また、反射強度場ではキンク領域に対応しており、中心付近で反射強度が弱い構造をもつものもあった。今後他の事例についても本アルゴリズムを適用することで、事例を蓄積し、冬季オホーツク海沿岸に発生する小スケールの渦の特性を包括的に調べることができると考えられる。 当該事例においてはアルゴリズムによる渦の自動検出を行うことができたが、レーダーから見てシアベクトルと直交する方向付近では、渦の検出において位置や直径のバラつきが見られた。アルゴリズムの特性上、シアライン上に形成された渦を検出する場合、このような角度における接線速度の小さい渦の検出が難しいことに注意が必要である。 |
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成果となる論文・学会発表等 |