共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
過冷却水中で成長する氷結晶周囲における熱拡散場の三次元解析 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 学習院大学計算機センター |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 横山悦郎 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
古川義純 | 北大低温研 |
研究目的 | 過冷却水から氷結晶が成長する際に、界面から潜熱が発生する。その際に結晶周辺に形成される熱拡散場を光干渉法により観察することは、水の融点近傍での屈折率の温度依存性が非常に小さいことから困難である。しかし重水を使うことによって、その困難を回避することができる。すでに我々は新たに開発した干渉縞解析手法を使って樹枝状氷結晶の干渉縞画像から熱拡散場を可視化している。しかしながら、そこで得られた熱拡散場は結晶成長セル内の光軸方向に沿った温度分布を積算した投影図である。即ち氷結晶周囲の熱拡散場の三次元構造はまだ得られていない。そこで三次元場の復元アルゴリズムを実際の干渉縞画像に適応し、その熱拡散を求める。 |
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研究内容・成果 | 過冷却水から氷結晶が成長する際、氷は始め円盤氷として成長し、円盤の厚みが臨界値に達すると一方の底面と他方の底面の大きさが異なる非対称な円錐台形となり、やがて大きな底面の縁にそって優先的な波長が選択される形態の不安定性(マリンズ・セカーカ不安定性)が起こり、6回対称性をもつ樹枝状結晶へと発達する。 我々はすでに平成12年度の共同研究において、2次元干渉縞シミュレーション画像からこの円盤氷の周りの熱拡散場の3次元熱拡散場を推定するアルゴリズムを開発している。 そのアルゴリズムの概略を以下に説明する。 温度分布に対応する干渉縞解析手法によって得られる位相分布は、結晶成長セル内の温度を光軸方向に積分した積算値となっており、実際の結晶周囲の温度ではない。 一般に円盤氷結晶周囲の正確な3次元温度分布を知るには、コンピュター断層撮影法(CT)のようにc軸に垂直なあらゆる方位から干渉縞画像を得る必要がある。 しかし、円盤氷のc軸に関する回転対称性を使えば、3次元温度分布を求めることができる。いま円盤氷結晶を含みc軸に垂直な面での温度分布を推定するとする。 円盤氷の回転対称性からその面での温度分布は、動径方向にのみ依存し方位には依らず同心円状となる。 干渉縞画像の測定光がこの同心円の弦を通るとすると、弦に対応する光路長は、弦の中点からその円の交点まで動径方向に沿った光路長の2倍に等しくなる。 数値計算の基本アルゴリズムである反復法を使ってこの光路長が等しくなる関係を与える温度場を推定するのが三次元場の復元アルゴリズムの要点である。 2次元干渉縞シミュレーション画像を使った検証から、 円盤氷の界面近傍まで位相分布を精度よく求めることができれば、3次元の温度分布を求めることが可能であることが分かっている。 これが平成12年度の共同研究で得られた結果であった。 今回はシミュレーション画像ではなく、宇宙ステーション「きぼう」で実験された無対流での実際の円盤氷結晶の干渉縞画像を用いて3次元温度場を推定する作業を行った。その結果、円盤氷が形成される0.1度以下の低過冷却及び更に0.05度以下の超低過冷却状態では、動径方向の成長速度が遅く界面から放出される潜熱の発生が小さくなる。形成される熱拡散分布は、結晶成長セルの容器の大きさにも依存するが、 我々の現況の小さな結晶成長セルを使った場合、熱拡散分布は非常に小さい。その結果、得られた干渉縞画像を位相場を抽出するとほとんど均一になってしまうことが分かった。 従って3次元温度場を正確に推定する目標は達成されていない。 次年度、超低過冷却状態での氷結晶周囲の熱拡散場解析を行う新たな手法を提案する研究を行う。現在、時空間画像による干渉縞の時間変化を精密測定することがその一つではないかと期待されている。 |
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成果となる論文・学会発表等 |