共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
広帯域レーダと2Dビデオディスドロメータの同時観測 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 大阪大学大学院工学研究科 |
研究代表者/職名 | 准教授 |
研究代表者/氏名 | 牛尾知雄 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
村田文絵 | 高知大 応用理学科 | 助教 |
2 |
河崎善一郎 | 大阪大学大学院工学研究科 | 教授 |
3 |
森本健志 | 大阪大学大学院工学研究科 | 助教 |
4 |
藤吉康志 | 北大低温研 | |
5 |
川島正行 | 北大低温研 |
研究目的 | 従来の降雨レーダの観測プロダクトは,散乱体積内の降雨の非一様性や未観測域となる低高度での降雨プロファイルの変化を捉える事ができず,これらが地上観測器である雨量計やディスドロメータと比較した際の潜在的な誤差要因となっていた. Ku帯広帯域レーダは,広帯域(80MHz)で周波数変調させた送信信号を用い,パルス圧縮を使用することで,最低観測高度50m,距離分解能5m程度を実現し,従来に比べより詳細な降雨プロファイルの取得を目的としたレーダである.本研究では,上記二つの誤差要因を定量的に評価する為に本レーダを用いて鉛直固定観測を行い,低高度における降雨プロファイルの変化を評価する. |
研究内容・成果 | 使用機器は大阪大学にて開発したKu帯広帯域レーダ(BBR)に加え,北海道大学所有の2次元ビデオディスドロメータ(2DVD)とする.2DVDは落下する雨滴の大きさを光学観測し,これにより高度0mにおける時系列の雨滴粒径分布(DSD)が得られ,そこから降雨量,レーダ反射因子等の降雨プロファイルを算出することができる.両機器は水平方向に10m程度,垂直方向に15m程度離れて設置されており(2DVDが鉛直下に位置),時刻同期は両機器の観測プロダクトの相関ピークを補正している. 観測諸元,対象を表1に示す.BBRは3秒毎に64パルスを放射し,ドップラー解析からレーダ反射因子を出力する.観測対象は2つの降雨イベントで,それぞれ層状性,対流性イベントに分類される.層状性降雨とは,上空にブライトバンドと呼ばれる反射強度の大きな層を伴い,時間,空間的に変化の緩やかな降雨とされている.一方対流性降雨とは,ブライトバンドを有さず,雷雨に代表されるような急激に変化する降雨である.これらは降水システムとして定性的に異なることが知られており,本研究では層状性と対流性を分類した上でそれぞれの低高度プロファイルの特徴について議論する. 両機器の差のヒストグラムをレーダの高度別に示したものを図1(層状性),2(対流性)の上図に示す.全体として対流性の方がばらつきは大きく,空間,時間的に変化に富むことを示している.また相関係数,差の平均値及び差の標準偏差の高度分布を,図1,2のそれぞれ左下図,中下図,及び右下図に定量的に示す.層状性降雨については機器の不具合により高度550m及び950m付近に異常値を出力しているが,それを除くと相関係数はやはり対流性の方が大きく悪化し,DSDの変化が大きいことが確認できる.定量的には,高度1000m付近では層状性が0.7付近であるのに対し,対流性が0.6近くまで悪化する. 差の平均値は層状性においてはほとんど変化が確認されず,高度1000mい赤において雨滴の併合,分裂がほぼ平衡状態であったと推測される.一方対流性においては降雨減衰の影響が顕著であり,適切な降雨減衰補正を行って再度検証する必要がある.また,差の標準偏差も増加の傾向は変わらず両イベントとも1000m付近で上昇が緩やかになるが,値自体は対流性が2倍弱程大きい. また鉛直方向の降雨の非一様性について図3(上:層状性,下:対流性)に示す.これはレーダにおける高度50-200m分のレーダ反射因子の平均値に対して,その体積中を数m分解能値がどのように分布するのかを示したもので,横軸が高分解能値と150m分解能値の差,縦軸が度数の百分率であり,150m分解能値別に色で分けている.これより,降水分布は強度による依存性が見られない一方イベントによって異なり,層状性の方がそのばらつきが大きいことが確認された. |
成果となる論文・学会発表等 |
Eiichi Yoshikawa, Tomoo Ushio, Takeshi Morimoto, Zen Kawasaki, Tomoaki Mega, Katsuyuki Imai, Takashi Nishida, Toshiya Saito, and Norio Sakazume, Rainfall observation with high resolution using Ku-band broad band radar, IEEE Radar Conference 2009, May. 6, 2009, Pasadena, USA. 吉川栄一,中村佳敬,中野藤之,森本健志,牛尾知雄,河崎善一郎,気象用Ku帯広帯域レーダの開発と高分解能観測結果,日本気象学会2008年度秋季大会,2008年11月19日,仙台 吉川栄一,青木政利,森本健志,牛尾知雄,河崎善一郎,気象用Ku帯広帯域レーダの開発と高分解能観測結果,日本地球惑星科学連合2009年大会,2009年5月19日,千葉 吉川栄一,森本健志,牛尾知雄,河崎善一郎,Ku帯広帯域レーダを用いた低高度における降水分布の解析,日本気象学会2009年度春季大会,2009年5月28日,筑波 |