共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

エマルションにおける油相-水相複合体の結晶化機構の解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 広島大生物圏科学
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 上野 聡

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

佐藤清隆 広島大生物圏科学 教授

2

嶋村圭輔 広島大生物圏科学 博士課程前期1年

3

三島尚子 広島大生物圏科学 博士課程前期1年

4

古川義純 北大低温研

5

佐崎 元 北大低温研

研究目的 冷凍保存中のクリームやマヨネーズの劣化現象(エマルションに含まれている油相と水相が相分離すること)は、油滴中の油脂の結晶化や分散媒である水の結晶化により、エマルションが破壊されて生じることが知られているが、どのようにして劣化が生じるのか、いつ劣化が始まるのか、劣化発現の条件等、詳細なメカニズム研究は未だ皆無であり、経験的に劣化防止の対策を採っているのみである。そこで、本研究では、「冷凍によるO/Wエマルションの乳化破壊を顕微鏡で観察し、冷凍による乳化破壊のメカニズムを解明する」および「O/Wエマルションに乳化剤を添加し、乳化剤による乳化破壊の抑制機構を解明する」、以上、2点を目的として測定を行う。
  
研究内容・成果 試料
大豆油のO/Wエマルション
乳化剤:10G1S
添加剤:10G12P(油相の結晶化の促進),
10G12PO(2/1)(油相の結晶化の抑制),
10G12PO(1/1)(油相の結晶化の抑制) 
油相に対して0.5%添加

測定方法
温度を変化させてO/Wエマルションを冷凍し、その後解凍する。
顕微鏡観察によって温度変化によるO/Wエマルションの挙動を観察する。
LINKAMによって温度コントロール
冷却過程20℃→(5℃/minで冷却)→-20℃
昇温過程-20℃→(5℃/minで昇温)→20℃

結果
(1)冷凍によるO/Wエマルションの乳化破壊の顕微鏡観察
冷却過程では始めに油相が結晶化し、次に水相が結晶化した。水相が結晶化した後に油滴同士の部分合一が確認された。
昇温過程では始めに水相が融解し、次に油相が融解した。水相が融解したときは油滴はまだ部分合一の状態であったが、油相の融解により油滴の合一が起こった。
(2)添加物によるO/Wエマルションの冷凍不安定化の抑制
10G12Pを添加した系では、冷凍による油滴の部分合一が顕著に観察された。
10G12PO(2/1)を添加した系では、冷凍による油滴の部分合一が一部観察された。
10G12PO(1/1)を添加した系では、冷凍による油滴の部分合一が一部観察された。
特に10G12PO(2/1) 、10G12PO(1/1)では粒子サイズの大きい油滴に部分合一が観察された。

考察
冷凍によるO/Wエマルションの乳化破壊のメカニズムは、水相の結晶化による体積膨張で油滴同士が押さえつけられることによって部分合一を起こす。そして油相の融解によって合一起こすために乳化破壊を起こすのではないかと考えられる。
添加物を加えた場合、油相の結晶化を促進する乳化剤(10G12P)を添加した場合、顕著に部分合一が観察され、油相の結晶化を抑制する乳化剤(10G12PO(2/1) 、10G12PO(1/1))を添加した場合、大きい油滴に部分合一が観察されたのは、油相が結晶化すると、部分合一を促進し、油相が結晶化しないと部分合一を抑制するのではないかと考えられた。
今後は、何故油相が結晶化しないと部分合一を起こさないかを調べる。

  
成果となる論文・学会発表等