共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
昆虫の凍結耐性獲得機構に関する研究 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 岡山大資源生物科学研究所 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 積木久明 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
吉田英哉 | 岡山大資源生物科学研究所 | 助教 |
2 |
泉洋平 | 岡山大資源生物科学研究所 | 技術職員 |
3 |
古川義純 | 北大低温研 | |
4 |
片桐千仭 | 北大低温研 |
研究目的 | 昆虫の寒さに対する適応は、凍結に耐えられるかどうかで大きく二つのタイプに分けられる。しかしながら熱帯から温帯に生息する多くの昆虫は凍結に耐えることができない。本研究は熱帯から温帯に生息しているにもかかわらず、凍結耐性を有しているニカメイガ越冬幼虫を用いて、その耐性獲得機構を明らかにすることが目的である。 |
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研究内容・成果 | これまでに、凍結耐性を有しているニカメイガ越冬幼虫は凍結時に、体液中のグリセロールと細胞内の水を水チャネルを介して置換することで、凍結死を誘発する細胞内凍結を防いでいることを明らかにしている。本研究では細胞膜を構成するリン脂質に注目して、ニカメイガ越冬幼虫と凍結耐性を有していない非休眠幼虫との間の違いを解析した。 リン脂質の定量 非休眠幼虫ではPCとPEの量はともに約1 mg/1g乾重であった。越冬幼虫のPEの量は約1.5 mg/g乾重であり、この値は越冬幼虫において最大であった。一方、この時のPCの量は約0.5 mg/g乾重で最小値を示した。PCとPEの加算量は非休眠と越冬幼虫ともに約2 mg/g乾重でほぼ一定であった。 脂肪酸組成 11種の脂肪酸、ミリストレイン酸[14:1]、パルミトレイン酸 [16:1]、オレイン酸 [18:1]、 リノール酸 [18:2]、 リノレン酸 [18:3]、 ガドレイン酸 [20:1]、ラウリン酸 [12:0]、 ミリスチン酸 [14:0]、 パルミチン酸 [16:0]、 ステアリン酸 [18:0]、 アラキジン酸 [20:0] が検出され、これらの脂肪酸は用いた試料中のすべてのPCおよびPEに含まれていた。非休眠幼虫では、PCの不飽和脂肪酸の割合は約45%、PEの不飽和脂肪酸の割合は約55 %であった。越冬幼虫では、PCの不飽和脂肪酸の割合は非休眠よりも若干高いが、50 %を超えることはなかった。一方、PEの不飽和脂肪酸の割合は急激に増加し、約81 %に達した。 各脂肪酸量の変化 各脂肪酸の量は、PCおよびPEの量とそれぞれの脂肪酸組成から計算した。PCを構成する脂肪酸の中で、ラウリン酸とミリスチン酸の量がPC量の増減と同様の変動を示した。他の脂肪酸も若干減少したが、供試したすべての試料で有意な変化はみられなかった。PEではオレイン酸の量だけが変化し、その他の脂肪酸では有意な変化はみられなかった。 これらの結果から、ニカメイガ越冬幼虫はリン脂質中のPEの割合を上昇させるとともに、その構成脂肪酸のうちオレイン酸の割合を上昇させることにより、低温下での流動性を維持していることが示唆された。 |
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成果となる論文・学会発表等 |