共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

プラスミン処理したフィブリノゲンを用いたクリオゲル形成に関する研究
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 群馬大学大学院工学研究科
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 外山吉治

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

糸井璃沙 群馬大学大学院 博士課程前期

2

落合正則 北大低温研

研究目的  フィブリノゲン水溶液を低温下に曝すと、トロンビン作用を受けることなくフィブリノゲン分子は集合し、高濃度ではクリオゲルを形成する。しかし、フィブリノゲンが低温下でどの様な形態で集合しゲル化に至るのか、そのメカニズムは明らかにされていない。本研究ではクリオゲル形成に深く関与していると思われるフィブリノゲン分子のalpha-C鎖に注目し、そのメカニズム解明を目指すものである。実験はフィブリノゲンをプラスミン処理によってalpha-C鎖を切断したフラグメントX(図1)を分離精製してalpha-C鎖がクライオゲルに与える影響を調べた。
フィブリノゲン分解産物フラグメントX HPLCクロマトグラム 濁度およびu値の経時変化
研究内容・成果 (試料調製)
 フィブリノゲン(最終濃度10mg/ml)に、セリンプロテアーゼであるプラスミンを0.03U/ml加えて25℃で反応させた。阻害剤(AEBSF)2mMを加えるまでの反反応時間は1時間および2時間とした。反応後の試料はSuperdex 200カラムによりフラグメント Xを分別し、限外濾過にて濃縮した。

(測定と解析)
 フラグメント X (6mg/ml)及びインタクトフィブリノゲン (3mg/ml)とフラグメント X (3mg/ml)の混合液2℃まで冷却し、400〜800nm波長における濁度(T)のスペクトルから、Carrらの解析手法を用いて形成された線維の単位長さ当たりの質量(u)を求めた。

(結果)
 図2は未処理フィブリノゲン、0.03U/ml プラスミンの1時間処理と2時間処理を示したHPLCクロマトグラムである。フラグメントXのピーク付近4mlを収集してSDS-PAGEで確認した。その結果、1時間処理ではA-Alpha鎖からalpha-C鎖が切断され、残りの27kDaのバンドが現れた。一方、2時間処理ではB-Beta鎖も切断されてしまうため、フラグメントXの最適反応時間は1時間とした。
 図3に低温濁度測定の結果を示す。上から、波長500nmの濁度、線維の単位長さ当たりの質量(u)の経時変化である。低温濁度測定では、フラグメントXのみの水溶液では全く白濁せず、インタクトフィブリノゲンとの混合液では白濁しにくくなることが分かった。解析は混合液のみで可能で、混合液のu値はインタクトと比べかなり小さく、ラテラル集合が抑制されていることが分かった。
フィブリノゲン分解産物フラグメントX HPLCクロマトグラム 濁度およびu値の経時変化
成果となる論文・学会発表等 (論文)
K. Kubota, Y. Masuda, Y. Toyama, N. Nameki, N. Okumura and M. Ochiai, Gel Formation of Recombinant Fibrinogen Lacking alpha C Termini, Prog.Colloid Polym. Sci., in press.
(学会発表)
糸井璃沙,外山吉治,行木信一,窪田健二,落合正則,プラスミン処理したフィブリノゲンの低温ゲル形成,日本生化学会関東支部例会,群馬,2008年6月21日.