共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

低温場中での走化性因子ケモカインの濃度勾配による好中球運動の観察と濃度分布測定
新規・継続の別 継続(平成16年度から)
研究代表者/所属 九州工業大学
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 玉川雅章

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

松村晃輔 九州工業大学大学院生命体工学研究科 大学院博士前期課程

2

古川義純 北大低温研

研究目的 生体内での免疫反応機構でみられる好中球(白血球)運動の走化性サイトカインの濃度勾配や周囲場の温度勾配による影響を調べ,その物理的な運動機構を明らかにし,生体内の薬物搬送システム(ドラッグデリバリーシステム)への応用に対する基礎的な検討を行う.
  
研究内容・成果 本年度は,平成19年度に引き続き,極低濃度のサイトカイン濃度分布を共焦点蛍光顕微鏡を用いて観察および解析を行った.

具体的には,1000-1ng/mlという極低濃度のサイトカインIL-8(分子量8000)溶液を水に滴下したときの濃度分布をサイトカインに付着した蛍光物質の共焦点顕微鏡観察により,その時間変化観察を試みた.前年度では用いなかった高感度カメラの併用によりサイトカインの濃度分布の時間的変化を2次元的にとらえることができ,好中球まわりの液体でのサイトカインの拡散係数を得ることができた.また,膜の上のサイトカイン濃度を同じく蛍光顕微鏡で計測し,まだノイズレベルが多いものの,サイトカインが膜の上で濃度移動している様子が計測でき,膜の上での拡散係数をおおよそ測定することができた.また,測定精度には問題があるものの,おおよそ好中球の液体中移動機構には濃度マランゴニ効果と周囲液体ならびに膜上のサイトカインの拡散係数の違いによって生じていることが示唆された.さらに,蛍光顕微鏡の空間精度を上げるために,より分解能の高いカメラの使用を行うことにより,膜上でのサイトカインの濃度輸送が外部の流体の濃度輸送と異なり,このことにより,好中球の駆動力の方向,すなわち,濃度の高い方へ移動することが説明されることが示唆された.

また,年度末においては,数値計算の併用による移動機構解明を行い,その結果,周囲流体と膜上での拡散係数(濃度輸送の速度)の違いや,吸脱着係数に相当するパラメータを変化させることで,膜上におけるサイトカイン濃度の勾配が周囲流体の濃度勾配と符号が反転するときに駆動方向が決定されることが示された.


  
成果となる論文・学会発表等 松村晃輔,玉川雅章,向井楠宏,古川義純,DDSカプセル駆動源開発のための好中球のサイトカイン濃度勾配による駆動機構解明,第21回バイオエンジニアリング講演論文集(No.08-53),209,2009