共同研究報告書
研究区分 | 一般研究 |
研究課題 |
オホーツク沿岸海跡湖の低次生物生産力に及ぼす環境要因の影響の解明 |
新規・継続の別 | 新規 |
研究代表者/所属 | 東京農業大学生物産業学部アクアバイオ学科 |
研究代表者/職名 | 教授 |
研究代表者/氏名 | 塩本明弘 |
研究分担者/氏名/所属/職名 | |||
氏 名
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所 属
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職 名
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1 |
西野康人 | 東京農業大学生物産業学部アクアバイオ学科 | 准教授 |
2 |
朝隈康司 | 東京農業大学生物産業学部アクアバイオ学科 | 講師 |
3 |
西岡純 | 北大低温研 | 准教授 |
研究目的 | オホーツク沿岸には多くの海跡湖が見られ、独自の生態系を有するとともに、湖の生態系のもつ生物生産力が地域産業の基幹である水産業を支えている。しかしながら、生態系の出発点である低次生産に関する知見は乏しい。地球環境が変化した場合、低次生産力におよぼす影響を予測することは生態系の保全はもちろん地域産業の振興面からも重要である。そこで、低次生物生産力の変動を導く環境要因について明らかにすることが、本研究の目的である。オホーツク沿岸の海跡湖をモデルフィールドとして、環オホーツク海域における海氷の生態系や物質循環に果たす役割を明らかにすることを目指す。 |
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研究内容・成果 | 結氷期における氷中ならびに氷下水中のクロロフィルa濃度の分布について報告する。調査は2008年の冬季、2月6日、2月18日、2月29日、3月10日、3月18日において氷中ならびに氷下水中のクロロフィルa濃度を<2μm、2-10μm、>10μmの3つのサイズに分けて測定した。調査時における氷の厚さは20〜30cm程度であった。いずれの調査日においても、氷中のトータルクロロフィルa濃度は下層5cmにおいて最大で、>10μmサイズがトータル濃度の90%以上を占めていた。2月18日と2月29日においては、下層5cmでトータルクロロフィルa濃度が150μg/L程度の著しく高い値となった。前後の調査日では15〜35μg/Lであったことから、アイスアルジーの大増殖(ブルーム)が2月18日〜2月29日までの少なくとも12日間みられたと考えられる。この時においても>10μmサイズがトータル濃度の90%以上を占めていた。したがって、氷中下層では常に大型のアイスアルジーが優占し、ブルームを支えているのも大型のものであることが示唆された。 氷下水中におけるトータルクロロフィルa濃度の鉛直分布をみると、2月6日には鉛直方向でほぼ一定(1μg/L前後)であったが、2月18日と2月29日では上層(氷の直下)で幾分高い値(3μg/L前後)がみられた。この両日はアイスアルジーのブルームがみられた時であり、アイスアルジーが水中に沈降した結果であるかもしれない。クロロフィルa濃度においては>10μmサイズの占める割合が最も高かったが、占有率はアイスアルジーの場合とは異なり50%程度であった。水中での高い濃度がアイスアルジー起源とするには、さらなる調査が必要である。 さらに、3月10日には深さ5〜10mにトータルクロロフィルa濃度が3〜5μg/L程度の高い値がみられ、3月18日にはさらに増加し10〜15μg/Lであった。>10μmサイズがトータル濃度の90%程度を占めていた。両日ともに水中の温度、塩分ともに上層から下層までほぼ一定であることから、この深さにアイスアルジーや植物プランクトンが蓄積したというよりも、著しい弱光に適応した大型植物プランクトンが増殖した結果と考えられる。 一方、海氷中の栄養塩を調べると、氷中下層5cmでは主たる窒素態栄養塩は2月6日〜3月10日までは硝酸塩であったが、3月18日はアンモニアであった。これは、氷中でのアイスアルジーのブルームが終了し、分解が始まったことを示唆しているのかもしれない。また、海水中と氷中で栄養塩類の濃度を比較したところ、窒素態栄養塩とリン酸塩は氷中の方が幾分低い程度であったが、ケイ酸塩は一桁程度氷中で低かった。ケイ酸塩濃度が氷中では著しく低い原因は不明であるが、このことはケイ酸塩がアイスアルジーにとって制限要因となるかもしれないことを示唆している。 |
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成果となる論文・学会発表等 |
能取湖における海氷と水柱のサイズ別クロロフィルaの分布動態.西野康人、佐藤智希、谷口旭.平成20年度極域気水圏・生物圏合同シンポジウム講演要旨集,240, 2008. Y. Nishino, T. Satoh, K. Asakuma, A. Shiomoto and A. Taniguchi. Seasonal and vertical distribution of phytoplankton and nutrients in Lagoon Notoroko on the coastal Okhotsk Sea. International Symposium on Application of a Closed Experimental System to Modeling of 14C Transfer in the Environment, 196-201, 2008. |