共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

鳥の飛行高度と渡りに及ぼす気象要素の影響解明
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 熊本大学
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 三田長久

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

植田睦之 特定非営利活動法人 バードリサーチ 理事長

2

高木憲太郎 特定非営利活動法人 バードリサーチ 研究員

3

藤吉康志 北大低温研

研究目的  本研究は,気象学,環境情報工学,鳥類学の協働により,鳥が短距離の移動および長距離の渡りを行う際の,気象学的観点からの飛行条件を現場観測から明らかにすること。次に,これらのデータを基に鳥の行動を予測する経験式を作成し,航空機や風力発電施設等での鳥の衝突事故(バードストライク)を軽減することを目的とする。
船舶レーダーでの渡り鳥の像 鳥の飛翔頻度の時系列高度別の分布 レーダーによる鳥エコーの飛来位置図
研究内容・成果 ・北海道大学での渡り鳥の飛翔状況と気象の関係の研究
 北海道大学低温科学研究所屋上で5月7日から10日にかけて船舶レーダーを使った渡り鳥の移動状況調査を行なった。また,9月25日から11月10日にかけては,連続的にデータの蓄積を行なった。船舶レーダーに,渡り鳥は図1のように映る。春の調査では,これを目視で数えることで,日による渡り鳥の時間/高度別の頻度分布を調べた。秋の調査では1秒間隔で画像を記録し,今後,後述する「自動観測システム」で解析する予定である。
 春の調査結果を図2に示す。5月7日から8日の夜には,多くの鳥が渡り,飛行高度は500〜1000mの位置が多かった。それに対して8から9日の夜は,渡りが盛んになる時間帯が遅く,かつ飛行高度も1000以上と高かった。さらに5月9日から10日の夜は渡りが少ないなど,日により渡りの数,時間帯,高度に大きな違いがあることがわかった。これと気象状況を比較すると,5月7日と8日では逆転層の生じる高度が8日で高い傾向があり,9日は気温が低かった。このように,渡り鳥が気象状況に応じて渡るかどうか,そしてその高度を変えている可能性が示された。今後,データを蓄積して,解析していくことで,それを明らかにすることが可能と考えられ,それが明らかにできれば,気象状況からバードストライクの危険の度合いを明らかにすることができるかもしれない。
・紋別でのワシ類の移動状況把握の研究
 紋別では11月11日から20日にドップラーレーダーでワシ類の移動状況が把握できるかどうかの試行調査を行なった。現地調査の結果から11月18日に多くのオオワシが紋別を通過したことが明らかになった。ドップラーレーダーのデータと比較したところ,その日の雄武のドップラーレーダーにオオワシと思われるエコーが映っていた(図3)。今年は渡りの時期にあまり冬型にならず,追い風にのれないオオワシは,通常に比べて低高度を渡っていた。通常の渡り高度でどの程度,把握することができるのか調査が必要である。
・船舶レーダーの自動観測システムの開発
 今回の調査でも,9月25日から11月10日にかけて連続してレーダーで鳥の通過状況を記録した。このような大量の記録を人の目で確認することは困難で,調査のためには自動的に鳥の通過状況を記録するシステムの開発が不可欠である。そこで,船舶レーダーのデータから鳥を自動的に抽出するためのソフトウェアの開発に着手した。現時点では,レーダー画像からレンジと中心を自動的に検出するソフトウェアを作成した。さらに,鳥の像をオプティカルフローにより追跡するソフトウェアも作成した。これらを組み合わせることにより鳥の飛行高度,飛行速度のレーダー回転面内への射影成分,が自動的に取得できる。しかし,処理速度が遅いという大きな問題点があり,今後改良する予定である。
船舶レーダーでの渡り鳥の像 鳥の飛翔頻度の時系列高度別の分布 レーダーによる鳥エコーの飛来位置図
成果となる論文・学会発表等 特になし。