共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

宗谷暖流の変動メカニズム
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 九大応力研
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 広瀬直毅

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

磯田豊 北大水産 准教授

2

吉川裕 九大応力研 准教授

3

滝川哲太郎 水産大学校 助教

4

田中伊織 北海道中央水試 部長

5

高柳志朗 北海道稚内水試 部長

6

江淵直人 北大低温研

7

三寺史夫 北大低温研

8

大島慶一郎 北大低温研

9

深町康 北大低温研

研究目的 対馬暖流系の対馬暖流・津軽暖流・宗谷暖流はそれぞれ密接な関係をもって変動していることが推測されており,それぞれが東シナ海・日本海・オホーツク海の環境変動に大きな役割を果たしている.これまで,宗谷暖流に関しては,観測の難しさなどから断片的な知見しか得られていなかったが,2003年より低温科学研究所が宗谷海峡域で短波海洋レーダによる表層流量のモニタリングを開始したことにより,その変動特性が明らかになりつつある.宗谷暖流を含む対馬暖流系の変動のメカニズムを明らかにするために,現場観測およびレーダ観測によるデータの蓄積のある低温科学研究所との共同研究を行う.
  
研究内容・成果 2008年9月に研究会(於:低温科学研究所)を開催し,研究代表者・分担者がそれぞれに行っている対馬暖流・津軽暖流・宗谷暖流に関する観測・データ解析・モデリングの研究成果を持ち寄って議論し,各暖流の詳細な構造や変動メカニズムに関する共通の理解が深まった.例えば,1990年代半ばの北海道中央水産試験場とロシア側機関との共同観測の結果は,宗谷海峡全域の流動場を捉える貴重な資料であると再認識された.サハリン南西沿岸部に現れる冷水域は,数値実験から宗谷海峡の浅海部(シル)からの沿岸補足波の伝播で説明できることも参加者の同意を得た.対馬海峡で特に顕著な年2回の流量ピークは,9月頃に襲来する台風によって生じる南西向流の影響であるようだ.さらに,三海峡通過流の駆動要因として,オホーツク海上の風変動や海面冷却効果との関連が活発に議論された.研究会を通じて明らかとなった季節変動・経年変動・短周期変動の情報を基に、その変動メカニズムの解明に向けて各自の研究が進展している.

研究会のプログラムは以下の通り.

2008年9月12日(金) 13:00〜18:00
開会挨拶と趣旨説明  広瀬 直毅(九大応力研)

● セッション1 宗谷暖流の観測とモデリング(13:10〜15:50)
船舶による夏季の宗谷暖流の観測
 ○松山 優治・北出 裕二郎・和高 牧子(東京海洋大)・石津 美穂(東北大理)・青田 昌秋(北大低温研)
北海道水産試験場による宗谷暖流域の観測
 ○田中 伊織(道中央水試)
北大低温研による宗谷暖流の係留観測
 ○深町 康・大島 慶一郎・江淵 直人(北大低温研)・水田 元太(北大院地球環境)・田中 伊織・吉田 英雄(道中央水試)・坂東 忠男(宗谷漁協)・佐野 稔(道稚内水試)・若土 正曉(北大低温研)
宗谷岬沖潮流推算表の漁業への応用の可能性
 ○佐野 稔(道稚内水試)・江淵 直人(北大低温研)・坂東 忠男(宗谷漁協)
宗谷暖流沖冷水帯の特徴と形成機構
 ○石津 美穂(東北大理)・北出 裕二郎・松山 優治(東京海洋大)
JCOPE-OKHOTSK OGCM に見られる宗谷暖流
 ○内本 圭亮・小野 純・三寺 史夫・江淵 直人(北大低温研)

● セッション2 宗谷暖流と日本海の流量収支(15:50〜17:30)
対馬海峡通過流量の季節・経年変動
 ○滝川 哲太郎(水大校)・尹 宗煥・福留 研一(九大応力研)
津軽海峡通過流について:流量変動とその要因
 ○伊藤 集通・川村 英之(JAEA)・大西 光代・磯田 豊・中山 智治・島 茂樹(海洋財団)
宗谷暖流流量の季節・経年変動
 ○大島 慶一郎(北大低温研)・森島 秀太(川崎造船)・江淵 直人・深町 康・若土 正曉(北大低温研)・Y. Volkov(FERHRI)
東アジア縁辺海のデータ同化研究(DREAMS計画)について
 ○広瀬 直毅(九大応力研)

総合討論
  
成果となる論文・学会発表等 江淵直人・佐野稔: 道北日本海の沿岸湧昇について. 2008年度日本海洋学会秋季大会, 呉, 2008年9月25日

江淵直人・佐野稔: 道北日本海の沿岸湧昇について -道北域沿岸水温データベースの解析から-, 平成20年度海洋理工学会秋季大会, 京都, 2008年11月11日

Ishizu, M., Y. Kitade, and M. Matsuyama: Characteristics of the cold-water belt formed off Soya Warm Current, J. Geophys. Res., 113, C12010, 2008.

Moon, J.-H., N. Hirose, J.-H. Yoon, and I.-C. Pang: Effect of the along-strait wind on the volume transport through the Tsushima/Korea Strait in September, J. Oceanogr., 65, 17-29, 2009.

和高牧子、松山優治、石津美穂、北出裕二郎、矢野泰隆: オホーツク海の宗谷暖流沖の底層に見られる高濁度水, 沿岸海洋研究, 46(2), 175-183, 2009.