共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

ウミアメンボ類を含むアメンボ科昆虫の休眠、温度耐性と脂質
新規・継続の別 新規
研究代表者/所属 高知大教育環境生理
研究代表者/職名 准教授
研究代表者/氏名 原田哲夫

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

竹中志保 高知大教育環境生理 大学院生(M1)

2

横田美香 高知大教育環境生理 大学院生(M1)

3

片桐千仭 北大低温研

研究目的 淡水産のアメンボ類は、成虫態で陸に上がって越冬するために、越冬成虫は低温や乾燥に強い耐性を持つことが分かってきている。一方で外洋棲ウミアメンボ類は比較的安定した外洋環境に生きており、温度変化などへの耐性が比較的低いことが、研究船(淡青丸、白鳳丸、みらい)の共同利用により判明しつつある。一方低温研究所は、昆虫の越冬と脂質(トリアシルグリセロール、リン脂質、炭化水素)との密接な関係について長年研究を蓄積してこられた。これまで探ってきた、環境因子と淡水産及び外洋棲アメンボ類の休眠、環境耐性との関係に、脂質がどのように関与しているのかを明らかにすることを目的とする。
高温亜麻痺状態のツヤウミアメンボ(みらい MR-08-02航海)  
研究内容・成果 ウミアメンボ類が環境の変動にどの程度耐性があるのかを測る指標として、高温耐性がある。これまで、それを測るため航海中に船内研究室で高温麻痺実験を行ってきた。アメンボ類の高温への耐性は低温への耐性と正の相関関係にあり(Harada et al., submitted)、高温耐性を調べることは、低温耐性を探ることにもつながる。 2007年度白鳳丸航海(KH-07-04-Leg1)では、インド洋の赤道付近の北緯8度から南緯6度までのさまざまなポイントで採取したツヤウミアメンボ(コスモポリタン)の高温耐性を調べた。その結果、南北からの海流がぶつかり合っている南緯6度で非常に高い高温耐性がみられた。これらは、ダイナミックな海洋動態のある海域では、環境変動への耐性が獲得されている可能性をうかがわせている。
 また、MR-08-02(本共同利用の共同研究者:片桐千仭博士も参加)では北緯12度、東経135度の20日間に渡る定点観測において、その後半に台風が発生し、それに伴う、(1)高い波浪、(2)25℃までに達する10回以上の気温低下、(1)集中豪雨による浸透圧低下ストレスの3つにさらされたと考えられる。定点観測期間後半に採取されたツヤウミアメンボの高温耐性がその前半に採取されたものよりはるかに弱かった。これら3つのストレスのうちいずれかが彼等の高温耐性を弱くしたと考えられる。また、いずれにしても、温度などの環境が比較的安定している外洋に生息しているウミアメンボ類は、環境変動が著しい陸水に棲む、同じウミアメンボの仲間であるシマアメンボ(Metrocoris histrio)よりはるかに温度耐性は低かった。これらの研究成果は2009年12月に東京で開催された、Blue Earth’09(海洋研究開発機構主催研究船使用による発表会でのポスター発表)と同年3月に北海道大学で開催された第53回日本応用動物昆虫学会(口頭発表)で、いずれも北海道大学低温研究所(共著者:片桐千仭博士)の共同利用研究成果として発表済みである。上記2つの航海で行った高温麻痺実験のサンプルを解剖により、生殖腺、消化管、脂肪体、骨格筋、その他の部位に解剖により分け、それぞれの臓器別に脂質分析を現在試みているところである。
 更に、これらの生理生態学的研究成果や生化学的成果を基に、小学校や中学校の理科・環境教育の新教材の開発も研究期間中行った。その成果の一部は「“外洋棲ウミアメンボ類の生活と海洋環境への適応”についての新教材」という題目で、The 22nd Biennial Conference of the AABE (Asian Association for Biology Education: 第22回アジア生物教育連合会議で北海道大学低温研究所(共著者:片桐千仭博士)共同利用の共同研究成果としてポスター発表済みである。  
   

高温亜麻痺状態のツヤウミアメンボ(みらい MR-08-02航海)  
成果となる論文・学会発表等 M. Yokota, T. Tamura, et al. New teaching materials on