共同研究報告書


研究区分 一般研究

研究課題

熱収支による道路雪氷の性状変化と路面のすべり摩擦係数の予測
新規・継続の別 継続(平成17年度から)
研究代表者/所属 福井大学大学院工学研究科
研究代表者/職名 教授
研究代表者/氏名 福原輝幸

研究分担者/氏名/所属/職名
 
氏  名
所  属
職  名

1

渡邊洋 福井大学工学部 特別研究員

2

藤本明宏 福井大学産学官連携本部 講師(研究員)

3

石川信敬 北大低温研

研究目的 本研究の目的は、冬期道路の安全性向上と道路管理の適正化およびコスト削減にある。そのために、道路雪氷の性状変化を模倣する熱・水分・塩収支による路面雪氷状態モデルを構築する。
本年度は、従来までの熱・水分収支モデルに凍結防止剤の熱・物理・化学的影響と路面雪氷物性とすべり摩擦係数の関係を組み込んだ。これによって,散布効果をμで評価できることになった.また、福井大学の低温恒温室で塩化ナトリウム溶液の凍結実験を行い、実験結果と計算結果との比較から、モデルの妥当性を検証した。
図1 NaCl溶液の凍結過程の概念図 図2 凍結実験の概要図 図3 BPNの経時変化
研究内容・成果 本研究では、路面雪氷層の熱・水分・塩(NaCl)収支モデルを構築した。以下に,図1を用いてNaCl溶液の凍結過程のモデル化について述べる.(i)SSI層の純熱収支フラックスQnet(W/m2)に準じて,Tsはa点から凝固点曲線上のb点まで低下する.この間のCsの変化はない.(ii)更にSSI層がQnet < 0にあるとき,QnetはNaCl溶液の凍結に費やされ,Tsは一定のままでCsはb’点の濃度(Csb’)まで増大する.(iii)Csの増大に伴ってTsは凝固点曲線上のd点,Tsdまで低下する.(iv)凝固点曲線上のd点では,Qnetに準じて凍結が進行してCsは増大する.このように,TsとCsは交互に変化しながら,c点に到達する.
 なお,上述の過程は図1中の(i)から(iv)に応じて示されるが,こうしたステップ上の凍結近似は,解析の計算間隔を短くすることで改善されるため,本解析では1秒とした.
モデルの妥当性を調べるために、福井大学の低温恒温室で凍結およびすべり抵抗実験を実施した(図2)。実験では,室内温度を低下させ,6時間に亘り密粒度舗装上の淡水あるいはNaCl溶液を凍結させる.Tsは舗装表面から0.5mm上方(SSI層の中央)に設置した熱電対で,舗装温度Tp(℃)は舗装表面から5,10,15,25,35および45mm下方に埋設された熱電対で計測される.また,気温Ta(℃)および相対湿度Ra(%)はSSI層の上方15mmに設置した温湿度計で,下向き長波放射RldはSSI層の上方0.2mに設置した放射収支計で,それぞれ測定される.実験手順は以下のとおりである.(i)低温恒温室で舗装内部の温度を一様(約3℃)にする.(ii)Tpと同温のNaCl溶液を厚さ1mmになるように舗装に散布する.(iii)Taを氷点下(-20℃)に設定し,実験を開始する.(iv)Csを塩分濃度計を用いて舗装上の異なる2ヶ所で30分間隔で測定する.(v)Tp,Ts,Ta,RaおよびRldはデータロガーで1分毎に自動収集する.
また,同じ実験条件下でポータブル・スキッド・レジスタンス・テスターを用いてすべり抵抗(BPN)とCsを30分間隔で測定する実験も実施した.
実験は,淡水凍結のケースと初期Cs(Cs0)を2,4および8%としたNaCl溶液凍結(3ケース)の計4ケースとし,それぞれCase-0,Case-C2,Case-C4およびCase-C8と呼ぶ.
本研究で得られた知見を列挙する.
(1)凍結速度は、塩濃度の増大に伴い指数関数的に低下する.
(2)BPNは質量含氷率に依存し,質量含氷率14%以下では76前後(湿潤路面と同程度)であり,それ以上では質量含氷率の増大とともに線形的に減少する.
(3)本モデルは,凍結過程における塩濃度および質量含氷率の増加とBPNの逓減(図3)を良好に再現できた.
(4)NaCl湿潤アスファルト舗装の凍結に伴うすべり抵抗は,本モデルにより予測可能となった.

図1 NaCl溶液の凍結過程の概念図 図2 凍結実験の概要図 図3 BPNの経時変化
成果となる論文・学会発表等